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住居跡「六本木4丁目3番13号」青山霊園1-イ2-11
「私が自分に祖父のある事を知ったのは、私の母が産後の病気で死に、その後二月程経って、不意に祖父が私の前に現れて来た、その時であった。私の六つの時であった」。この簡潔にして明瞭な、情報を的確に盛り込んだ名文は、志賀直哉の長編小説「暗夜行路」の冒頭です。母と祖父の不義の結果、生を受けた「私」の苦悩を描く、近代小説の金字塔である本作のこの出だしは、「日本語の名手」という評判をほしいままにした志賀の、実力を語って余りある文章です。
その志賀は麻布三河台町、現六本木4丁目で14歳から29歳までの時を過ごしました。裕福な家に生まれた志賀はこの地で1,682坪の広大な邸宅に住み、当時高価だった自転車を乗り回して、赤坂の三分坂や虎ノ門の江戸見坂まで出向いていました。
若き日の志賀は文学にのめり込み、実業家の父に疎まれるようになっていきます。志賀家では祖父も財界人で、しかも足尾銅山開発に関わった人物でした。当時の社会問題であった鉱毒事件に対して志賀家内では、若い志賀の正義感と父の立場が衝突することもあったようです。
やがて志賀は麻布三河台の屋敷を飛び出し、父への反発を昇華させた「暗夜行路」を著すこととなります。
後に作家として大成し、父とも和解した志賀は、今、一族の墓所がある青山霊園に眠っています。
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