27港教指第3762号 平成28年3月31日 港区学校職員の障害を理由とする差別の解消の推進に関する要綱に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方  法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。  ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。  本留意事項において、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できる限り取り組むことが望まれることを意味する。(以下同じ。) 第2 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。教育委員会においては、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。  学校職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。 第3 不当な差別的取扱いの具体例  不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。  1 不当な差別的取扱いに当たり得る具体例   ア 障害を理由に窓口対応を拒否する。   イ 障害を理由に対応の順序を後回しにする。   ウ 障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。   エ 障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。   オ 事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来園・来校の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒む。   カ 試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に、当該試験等の結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりする。  2 不当な差別的取扱いに当たらない具体例   ア 学校等において、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害のある幼児、児童及び生徒の障害の状況等を確認する。   イ 障害のある幼児、児童及び生徒のため、通級による指導を実施する場合において、また特別支援学級において、特別の教育課程を編成する。 第4 合理的配慮の基本的な考え方  1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。    法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。    合理的配慮は、事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。  2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。    なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。  3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。    また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法廷代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。    なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法廷代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。  4 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 第5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。学校職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。  ア 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か)  イ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  ウ 費用負担の程度 第6 合理的配慮の具体例  第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。プライバシーに配慮し、本人の意思を確認した上で適切な配慮を提供することが必要である。具体例としては、次のようなものがある。  なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 1 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例  ア 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。  イ 配架棚の高い所に置かれた図書やパンフレット等を取って渡す。図書やパンフレット等の位置を分かりやすく伝える。  ウ 施設利用等に当たり、障害者からの要望等に応じ、目的の場所まで付き添って案内をする。その際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩き、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞く。  エ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。   オ 疲労を感じやすい障害者から休憩の申出があった場合、施設の状況に応じて休憩スペースや椅子を提供する。   カ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、学校職員が書類を押さえる、又は、バインダー等の固定器具を提供する。   キ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難し い聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導する。   ク 聴覚過敏の児童生徒等のために教室の机・椅子の脚に緩衝材を付けて雑音を軽減する、視覚情報の処理が苦手な児童生徒等のために黒板周りの掲示物等の情報量を減らすなど、個別の事案ごとに特性に応じて教室環境を変更する。   ケ 介助等を行う学生(以下「支援学生」という。)、保護者、支援員等の教室への入室、授業や試験でのパソコン入力支援、移動支援、待合室での待機を許可する。  2 合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例   ア 筆談、読み上げ、手話、要約筆記、点字、拡大文字、手書き文字(手のひらに文字を書いて伝える方法)等のコミュニケーション手段を用いて説明等を行う。   イ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の資料でページ番号等が異なりうることに留意する。   ウ 印刷物の作成に当たっては、港区カラーバリアフリー・ガイドラインに基づき、配色やデザインを工夫し、なるべく大きな文字を使用する。   エ 視覚障害者に資料等を提供する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)を用いる。   オ 問合せ先には、電話番号だけでなく、ファックス番号を併記する。また、申出に応じ、ファックスや電話など多様な媒体により情報提供や利用受付等を行う。   カ 通常口頭で行っている案内等の内容を紙にメモをして渡す。その際、なじみのない外来語は避け、漢数字は用いない。また、時刻は24時間表記ではなく12時間表記を用いる。ルビを付与した文字の使用や分かち書き(文を書くとき、語と語の間に空白を置く書き方)をする。   キ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示し、分かりやすく伝達する。本人の依頼がある場合は、代読や代筆といった配慮を行う。   ク サービスの説明等に当たり、一度に複数の内容を伝えるのではなく、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明する。また、抽象的な表現は避け、具体的な言葉を用いて説明する。   ケ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵や写真カード、コミュニケーションボード等を活用して意思を確認する。   コ 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。   サ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある人や知的障害を持つ人に対して、手元資料のページ送りや質疑応答などの際に準備をする時間をとるなど、ゆっくり、丁寧な進行を心がける。   シ 視覚障害者に説明する際、「それ」「あれ」「こっち」「このくらい」等の指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」等、具体的に説明する。   ス 不特定多数の区民等が参加する講演会等に手話通訳や要約筆記を配置する。また、磁気ループが配置されている会場を使用し、又は携行式の磁気ループを用意して会場に配置する。  3 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例   ア 聞こえにくさのある児童生徒等に対し、外国語のヒアリングの際に、音質・音量を調整したり、文字による代替問題を用意する。   イ 知的発達の遅れにより学習内容の習得が困難な児童生徒等に対し、理解の程度に応じて、視覚的に分かりやすい教材を用意する。   ウ 肢体不自由のある児童生徒等に対し、体育の授業の際に、上・下肢の機能に応じてボール運動におけるボールの大きさや投げる距離を変えたり、走運動における走る距離を短くしたり、スポーツ用車椅子の使用を許可したりする。   エ 日常的に医療ケアを要する児童生徒等に対し、本人が対応可能な場合もあることなどを含め、配慮を要する程度には、個人差があることに留意して、医療機関や本人が日常的に支援を受けている介助者等と連携を図り、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、過剰に活動の制限等をしないようにする。   オ 慢性的な病気等のために他の児童生徒等と同じように運動ができない児童生徒等に対し、運動量を軽減したり、代替できる運動を用意したりするなど、病気等の特性を理解し、過度に予防又は排除をすることなく、参加するための工夫をする。    カ 治療等のため学習できない期間が生じる児童生徒等に対し、補講を行うなど、学習機会を確保する方法を工夫する。   キ 読み・書き等に困難のある児童生徒等のために、授業や試験でのタブレット端末等のICT機器使用を許可したり、筆記に代えて口答試問による学習評価を行ったりする。   ク 発達障害等のため、人前での発表が困難な児童生徒等のために代替措置としてレポートを課したり、発表を録画したもので学習評価を行ったりする。   ケ 学校生活全般において、適切な対人関係の形成に困難がある児童生徒等のため に、能動的な学習活動などにおいてグループ編成する時には、事前に伝えたり、場合によっては本人の意向を確認したりすること。また、話し合いや発表などの場面において、意思を伝えることに時間を要する場合があることを考慮して、時間を十分に確保したり個別に対応したりする。   コ 電子メールやホームページ、ファックスなど多様な媒体で情報提供を行う。   サ 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。   シ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。   ス 窓口が複数ある場合、本人ではなく、職員が移動し、同じ窓口で対応する。   セ 疲労を感じやすい障害者に対し、椅子のあるところに案内をした上で、そちらに出向いて用件を聞く。   ソ スクリーン、手話通訳者、板書等が見やすい位置に座席を確保するとともに、適度な明るさを確保するなど、文字や通訳等の見やすさにも配慮する。   タ 施設利用等に当たり、移動に困難のある障害者に対し、早めに入退場の案内をする。また、車椅子を使用する障害者の希望に応じて、決められた車椅子用以外の客席も使用できるようにする。   チ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。   ツ 区が有する施設の敷地内の駐車場等において、障害者の来園・来校が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 第7 学校等の事務又は事業以外の事務又は事業を行う場合における配慮すべき事項  1 学校等の事務又は事業以外の事務又は事業を行う場合においては、港区職員の障害を理由とする差別の解消の推進に関する要綱及び港区職員の障害を理由とする差別の解消の推進に関する要綱に係る留意事項に留意するものとする。  2 学校等の事務又は事業以外の事務又は事業を事業者に委託し、又は学校職員以外の者が学校等の事務又は事業以外の事務又は事業を行う場合は、港区職員の障害を理由とする差別の解消の推進に関する要綱及び港区職員の障害を理由とする差別の解消の推進に関する要綱に係る留意事項を踏まえた適切な対応を行うために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 付 則 この留意事項は、平成28年4月1日から施行する。