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区の子育て支援施設「あい・ぽーと」施設長でもある大日向雅美氏から、区民の皆さんに向けて寄稿文をいただきました。
大日向雅美氏(恵泉女学園大学学長)
令和元年6月に児童虐待防止対策の強化として体罰禁止を定めた児童福祉法等の一部改正法が成立し、令和2年4月から施行となりましたが、「ちょっと手をあげただけで法律違反になってしまうの?子育てなんかできない!」と子育て中の親の間に不安と戸惑いが強まっていると聞きます。わが子の叱り方に悩み、ときに手をあげ、そのことに親自身が傷ついている、これ以上、親を追い詰めてはならないと切実に思います。体罰禁止は一つの法律で解決されるものではありません。むしろ、子どもと親を社会全体で支援する仕組みとまなざしを醸成する必要性を痛感いたします。
「一度も手を上げずに子育てしている」と言い切れる親は少ないことでしょう。また、子育てという私的領域に法律が介入することへの違和感、あるいはしつけには体罰が必要だという体罰肯定論もあります。そうしたことが体罰禁止法への不安と違和感につながっていると思いますが、一方、昨今、痛ましい虐待で子どもが命を落とす事件が続いていることは周知の通りです。子どもの命と人権を守るための施策は喫緊課題なのです。
しかし、この法律には罰則がありません。単に親を罰することを意図したものではなく、子育てを社会全体でサポートし、体罰によらない子育てを推進することをめざしているものなのです。
「子どもは言葉や理解力が未発達なのだから、身体に痛みを加えて善悪を覚えさせることが必要」「人を叩いてはいけないことは、同じように叩かれて痛みを知らせることが必要」という考えの基に体罰が肯定されるとしたら、例えば妻の心得をただすのだと言って夫が妻を殴って、妻は納得するでしょうか。外国人が仮に日本社会ではマナー違反となることをしたときに、日本語が分からないからと叩いたり殴ることが許されるでしょうか。いずれも暴力の行使であり、決して許されない犯罪です。
相手が子どもなら、なぜ許されるのでしょうか。体罰肯定論の一番の問題は、子どもの人権に尊重の念を欠いていることに他ならないと思います。なお、危ないことをしたときに思わず大声を出したり身体を使って制止したりするのは、何とか危険を避けようとする親の精一杯の「ノンバーバルコミュニケ―ション」だと考えます。
厚生労働省が設置した「体罰によらない子育ての推進に関する検討会」は子どもの権利を守る立場からの弁護士、小児科医や発達心理学者、妊娠から出産後までを見守る看護師、子育て現場のNPO活動家等が参画しました。専門領域と立場を異にしつつも、子どもの命と人権を守りたい、そのためにも親への支援を充実すべきだという視点と思いは共通のものでした。
報告書「体罰等によらない子育てのために」の副題『みんなで育児を支えるために』は素案のパブリックコメントと同時に全国に募集し、寄せられた527件の中から選んだものです。これだけ多くの人が子どもの虐待に胸を痛め、親の辛さに目をとめていることが分かるうれしい反響でした。
世界屈指の福祉先進国スウェーデンは、世界で初めて(昭和54年)子どもへの体罰を禁止した国でもあります。現在、ほとんどの家庭で体罰は行われていないと聞きますが、法律成立からここに至るまで優に40年近い歳月にわたって、子どもの命と人権を守るさまざまな試みがなされています。こうした長期の取り組みを支えてきたのが「社会が親に優しくあることが子どもを守ることにつながる」という哲学でした。私たち日本社会も今回の法改正と検討会が作成したガイドラインをスタートに、子育てを皆で支える社会を築きたいと心から願っております。
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