本計画は港区バリアフリー基本構想です。令和3年7月に更新しています。 港区平和都市宣言 かけがえのない美しい地球を守り、世界の恒久平和を願う人びとの心は一つであり、いつまでも変わることはありません。私たちも真の平和を望みながら、文化や伝統を守り、生きがいに満ちたまちづくりに努めています。このふれあいのある郷土、美しい大地をこれから生まれ育つこどもたちに伝えることは私たちの務めです。私たちは、我が国が非核三原則を堅持することを求めるとともに、ここに広く核兵器の廃絶を訴え、心から平和の願いをこめて港区が平和都市であることを宣言します。 昭和60年8月15日 港区 策定にあたって 港区は、陸海空の交通の要衝であり、東京・日本の玄関口として、国内外から多くの人々が集うまちです。オフィスや商業施設など都市機能が集積するとともに、地域ごとに個性あふれる魅力を備えています。また、約130か国に及ぶ様々な国籍の外国人が居住している、国際性の豊かさも特徴です。このような港区において、年齢・性別・人種・障害の有無等に関わらず、誰もが安全・安心かつ円滑に移動ができ、いきいきと元気に暮らすことができる都市空間を形成するため、バリアフリーの推進は欠かすことのできない重要な取組となっています。 区では、平成26年に港区バリアフリー基本構想を策定し、区民や事業者の皆さんと連携、協働を図りながら、駅や公共施設、医療施設等とその移動経路となる道路のバリアフリー化の推進に取り組んでまいりました。 このたび新たに策定した港区バリアフリー基本構想では、すべての人にとってわかりやすく、利用しやすいまちづくりをめざすユニバーサルデザインを更に推進するとともに、重点整備地区として、特に利用者数の多い新橋駅と品川駅周辺を新たに追加しています。駅のホームから地上出口までの複数ルートの整備や段差の解消、点字ブロックの配置など、地域のニーズを捉えたバリアフリー化を一層進めてまいります。また、区民の皆さん一人ひとりがお互いに理解し、尊重し、思いやり、支え合う心のバリアフリーの推進に向けた取組など、更なる施策の充実を図ってまいります。 区は、区民や事業者の皆さんと手を携えて、人にやさしい良質な都市空間・居住環境の維持と創造に向け、全力で取り組んでまいります。そして、区民一人ひとりがこれまで以上に大切にされ、多様性を認め合うことで、港区に住み、働く人たちがともに支え合い、心豊かに暮らせる地域共生社会を実現してまいります。 本基本構想策定にあたり、ご尽力を賜りました港区バリアフリー基本構想推進協議会の委員の皆さんをはじめ、数多くの貴重なご意見をいただきました区民の皆さんに心からお礼を申し上げます。 令和3年3月 港区長 武井雅昭 目次 第1章 港区バリアフリー基本構想とは 1ページ 1の1.港区バリアフリー基本構想とは 1ページ 1の2.港区バリアフリー基本構想の位置づけ 2ページ 1の3.これまでの経緯 3ページ 第2章 策定の考え方 4ページ 2の1.策定の背景 4ページ 2の2.現状の課題と策定の視点 15ページ 第3章 港区バリアフリー基本構想における基本方針 17ページ 3の1.基本理念 17ページ 3の2.基本方針 17ページ 3の3.計画期間 19ページ 第4章 ユニバーサルデザインによる多様なニーズへの対応 20ページ 4の1.ユニバーサルデザインとバリアフリーの関係 20ページ 4の2.ユニバーサルデザインの考え方と位置づけ 22ページ 第5章 バリアフリーの更なる加速化 29ページ 5の1.整備方針 29ページ 5の2.新たな重点整備地区 34ページ 5の3.重点整備地区の一覧 47ページ 第6章 心のバリアフリーの推進 92ページ 6の1.心のバリアフリーとは 92ページ 6の2.心のバリアフリーの現況 92ページ 6の3.心のバリアフリーの推進に向けた取組の視点 95ページ 第7章 特定事業及び区全域の取組について 98ページ 7の1.特定事業の方針 98ページ 7の2.特定事業の内容 109ページ 7の3.区全域で推進する取組 126ページ 第8章 基本構想の推進に向けて 132ページ 8の1.推進体制 132ページ 8の2.進行管理 134ページ 参考資料 136ページ 参考資料の1.旅客施設のバリアフリー情報 136ページ 参考資料の2.バリアフリーのまちづくりに関する区民アンケート調査結果 令和元年度 143ページ 参考資料の3.港区バリアフリー基本構想推進協議会設置要綱 154ページ 参考資料の4.港区バリアフリー基本構想推進協議会名簿 156ページ 参考資料の5.港区バリアフリー基本構想推進協議会 事業者部会名簿 158ページ 参考資料の6.港区バリアフリー基本構想策定委員会設置要綱 160ページ 参考資料の7.港区バリアフリー基本構想策定委員会委員名簿 162ページ 参考資料の8.これまでの検討経緯 163ページ 参考資料の9.用語集 164ページ 1ページ 第1章 港区バリアフリー基本構想とは 1の1.港区バリアフリー基本構想とは バリアフリー基本構想は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の規定により国が定めた移動等円滑化の促進に関する基本方針に基づき策定するものです。 港区においても高齢者、障害者等、誰もが安全に安心して快適に移動できるバリアフリー空間の計画的な整備を進めていく方針として策定しています。 今回、平成30年及び令和2年のバリアフリー法の改正や、バリアフリー化を必要とする人々の増加と多様化、区民のバリアフリーに対する意識の変化等を踏まえて、令和の新しい港区バリアフリー基本構想として策定しました。 バリアフリー法とは バリアフリー法は、高齢者、障害者等が自立した日常生活や社会生活を営むことができる生活環境整備をめざし、移動等円滑化に関してより、一体的・総合的な施策の推進を図るため、公共交通機関を対象とした、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律及び建築物を対象とした高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築に関する法律を統合・拡充し、平成18年12月に施行された法律です。 バリアフリー法では、バリアフリー基本構想を公共交通機関、道路、都市公園、建築物、交通安全施設等の施設管理者等に移動等円滑化基準への適合義務を課すことによって、歩行空間の確保や施設・設備を利用する際のバリアを取り除き、重点的かつ一体的なバリアフリー化を推進しようとするものとして位置づけています。 2ページ 1の2.港区バリアフリー基本構想の位置づけ 港区バリアフリー基本構想は、バリアフリー法を受けて、区の基本構想、基本計画やまちづくりマスタープラン、福祉のまちづくり等のバリアフリーに関する他の関連計画との整合性や事業連携を図りながら進めていく個別計画です。 3ページ 1の3.これまでの経緯 国及び港区のバリアフリーに関連する経緯は次のとおりです。 港区では平成19年4月に港区交通バリアフリー基本構想を策定して以降、区内のバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進するため、各地区総合支所を含む浜松町、赤坂、六本木、白金高輪、田町の5つの駅周辺地区の重点整備地区の指定や、バリアフリー法の基本方針の改正を踏まえ、平成26年に港区バリアフリー基本構想の策定を行ってきました。 4ページ 第2章 策定の考え方 2の1.策定の背景 港区バリアフリー基本構想が策定されてから6年が経過し、重点整備地区の対象施設のバリアフリー化は着実に進んできましたが、これまでの港区バリアフリー基本構想に基づいた計画期間である令和2年度を迎えたこと、更に多様な利用者からの更なるバリアフリー化を求める声などを勘案し、新たな港区バリアフリー基本構想の策定を行うこととしました。 今回は主に次の7点を背景に港区バリアフリー基本構想を策定します。 ・バリアフリー化を必要とする人々の増加と多様化 ・バリアフリー法の改正 ・ユニバーサルデザイン等の関連法令等の動向 ・区民のバリアフリーに対する意識の変化 ・国際的な持続可能な開発目標(SDGs)への取組 ・新型コロナウイルス感染症の感染拡大による生活様式の変化 ・財政を取り巻く厳しい状況の認識 5ページ (1)バリアフリー化を必要とする人々の増加と多様化 @港区の人口の変化 バリアフリーを必要とする人々の割合の大きな変化はありませんが、港区全体の人口は増加傾向にあり、今後も増加し、令和9年には30万人を超えると推測されます。 港区は、外国人居住者や来訪者等の多様な人が集積しているまちであり、バリアフリーを必要とする人々も人口の増加にあわせて増加する傾向にあります。 6ページ この頁では、人口の変化のグラフを示しています。 7ページ A観光客数の動向 日本を訪れる外国人観光客は増加傾向にあり、東京都に訪れる外国人旅行者数は平成26年と比べて倍近く増加しています。大使館や外国系企業等の国際的資源が豊富な港区では、国外からの多様な来訪者に対応したバリアフリーの整備が必要です。 8ページ (2)バリアフリー法の改正 @バリアフリー法の改正や関連法令等の動向 世界中の様々な人々が集まる、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定を契機に、バリアフリー法及び関係施策が平成30年以降、改正又は制定されています。主な関連法令は次の表のとおりです。 9ページ Aバリアフリー法の改正 平成30年5月の改正 平成30年11月及び平成31年4月施行の内容をまとめています。 ○基本理念の規定 ・理念規定を設け、共生社会の実現、社会的障壁の除去を明確化 ・心のバリアフリーとして、高齢者、障害者等に対する支援を明記 ○公共交通事業者等によるハード・ソフト一体的な取組の推進 ・ハード対策に加え、接遇・研修のあり方を含むソフト対策のメニューを国土交通大臣が新たに作成 ・事業者は、ハード・ソフト計画の作成・取組状況を報告・公表 ○バリアフリーのまちづくりに向けた地域における取組強化 ・区市町村がバリアフリー方針を定めるマスタープラン制度を創設 ・近接建築物との連携による既存地下駅等のバリアフリー化を促進するため、協定(承継効)制度及び容積率特例を創設 ○更なる利用し易さ確保に向けた様々な施策の充実 ・貸切バス・遊覧船等の導入時におけるバリアフリー基準適合を義務化 ・建築物等のバリアフリー情報の提供を新たに努力義務化 令和2年5月の改正 令和2年6月及び令和3年4月施行の内容をまとめています。 ○公共交通事業者等の施設設置管理者におけるソフト対策の取組強化 ・公共交通事業者等に対するスロープ板の適切な操作、明るさの確保等ソフト基準適合義務の創設 ・公共交通機関の乗継円滑化のため、他の公共交通事業者等からの旅客支援、情報提供等のハード・ソフトの移動等○円滑化に関する協議への応諾義務を創設 ・障害者等へのサービス提供について国が認定する宿泊施設・飲食店等の観光施設の情報提供を促進 ○区市町村等による心のバリアフリーの推進 ・目的規定、国が定める基本方針、区市町村が定める移動等円滑化促進方針の記載事項や、基本構想に記載する事業メニューの一つとして、情報提供、理解の増進、協力の確保等の心のバリアフリーに関する事項を追加 ・児童や学生のバリアフリーの理解を深めるための学校と連携して行う教育活動の実施、住民やその他の関係者との協力の確保に必要な啓発活動の実施等の教育啓発特定事業を追加 ・バリアフリーの促進に関する地方公共団体への国の助言・指導 ○バリアフリー基準適合義務の対象拡大 ・公立小中学校及びバス等の旅客の乗降のための旅客特定車両停留施設を追加し、共生社会の実現に向け、高齢者、障害者等を含む全ての人々が互いの個性を尊重しあう移動等の環境を整備 10ページ この頁では、国土交通省のバリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について、最終とりまとめを示しています。 11ページ この頁では、国土交通省のバリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について、最終とりまとめを示しています。 12ページ (3)ユニバーサルデザイン等の関連法令等の動向 @関連法令の動向 ア.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行。平成25年法律第65号 ○基本方針 ・障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策の基本的な方向 ・行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 ・事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 ・その他、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 イ.ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律の施行。平成30年法律第100号 ○基本方針 ・日常生活又は社会生活上特に配慮を要する者の、教育の内容及び方法の改善及び充実 ・多様な就業の機会の確保 ・移動上又は施設の利用上の利便性及び安全性の確保 ・手話等の意思疎通のための手段並びに情報の取得及び利用のための手段の確保 ・障害者、高齢者等の安全を考慮した防災上の措置 ・選挙等に関し、円滑に投票を行うことができる環境の確保 A港区の条例の動向 ウ.港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例。令和元年12月1日施行 ○条例の特徴 ・区は区民や事業者の皆さんに、手話が言語であることの理解を促進 ・障害者のそれぞれの障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進 ・区は施策を実施する際、区民や事業者の皆さんと協働の下、参画を得て行う ・緊急時及び災害発生時は、共助の理念のも下、障害のあるかたが情報を円滑に得られるよう、区は、区民や事業者の皆さんと、多様な意思疎通手段を利用し、情報提供に取り組む ・事業者の皆さんが行う自主的な取組を促進するため、区は情報の提供及び助言を行う 13ページ (4)区民のバリアフリーに対する意識の変化 バリアフリー状況の事後評価として区民アンケートを実施しており、平成25年度と令和元年度の結果を比較すると、バリアフリー化が進み、便利になった、と、改善された、と感じる意見も多かった一方で、駅のバリアフリールートの複数化を望む意見や、トイレ内の大人用ベッドの設置等、更にレベルを上げたバリアフリー対策についてのニーズが高まっています。 (5)国際的な持続可能な開発目標への取組 @持続可能な開発目標(SDGs)とは SDGsとは、平成27年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための2030アジェンダにて記載された令和12年までに持続可能でより良い世界をめざす国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成され、地球上の誰一人取り残さないことを誓っており、普遍的なものとして全ての国で取組が進められています。 ASDGsと港区バリアフリー基本構想との関係 SDGsが掲げる、誰一人取り残さない社会の実現に向けて、国や地方自治体、企業、教育・研究機関、NPOなど、様々な主体により積極的な取組が展開されています。SDGsが掲げる目標や方向性は地域課題の解決に資するものであることから、区は、本基本構想における政策や施策とSDGsとの関連を明らかにし、SDGsの目標を踏まえて各施策を推進していきます。 14ページ (6)新型コロナウイルス感染症の感染拡大による生活様式の変化 令和2年より新型コロナウイルス感染症が感染拡大しており、港区は東京都内の自治体の中でも感染者数の多い地区となっています。令和2年3月より、新型コロナウイルス感染症を契機として、3つの密、密閉空間、密集場所、密接場面をできる限り避けるとともに、人との距離はソーシャル・ディスタンスの2メートル、こまめな手洗い、咳エチケットなど、感染防止のための新しい生活様式により、暮らし方や働き方は転換期を迎えています。 (7)区財政を取り巻く厳しい状況の認識 区は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による人口動向への影響を注意深く観察し、本基本構想に計上した事業等の実施について柔軟に対応するとともに、景気後退による財政状況の変化も注視し、優先的・重点的に取り組む課題に財源を積極的に配分することにより、港区らしいきめ細やかなサービスを展開してまいります。 15ページ 2の2.現状の課題と策定の視点 以下の現状の課題を踏まえ、港区バリアフリー基本構想における策定の視点とします。 ○課題1 誰もが移動しやすく、使いやすい施設整備の推進が必要 区全体の人口の増加に伴いバリアフリーを必要とする人々、高齢者、要介護認定者、障害者、子育て世代、外国人居住者等も増加の傾向にあり、誰もが分かりやすく使いやすい施設整備の推進が必要です。 観光客数が増加傾向にあり、港区は多様な人々が集まるまちのため、来街者の誰もが円滑に利用できる環境を整えるとともに、案内のしやすさを考慮した整備の検討が必要です。 ○視点1 ユニバーサルデザインの推進 港区は多様な人々が暮らし、集まるまちとして、誰もがわかりやすく使いやすい施設整備が必要なため、ユニバーサルデザインを更に推進し、ハード・ソフト両面からバリアフリーへの取組を強化することで、誰もが円滑に施設を利用できる環境を整え、安全・安心に気持ちよく過ごせる環境を形成します。 ○課題2 バリアフリー化の更なる推進と港区ならではの新たな取組が必要 これまでの港区バリアフリー基本構想に位置づけた特定事業は一定程度の進捗が見られますが、総事業数961件に対して、整備数729件で、75.9%の進捗率と目標の100%の達成ができない見込みです。未完了事業の継続的な推進が必要です。 完了事業についても利用しやすさの向上のための要望があるため、利用者の意見と実際の整備に乖離が起きないよう、利用者の意見を伺いながら、港区ならではの坂道への対応や運河沿いの遊歩道の整備、年齢・性別・人種等を問わず多様な人々に対応した新たな取組を検討する必要があります。 現在の重点整備地区の指定から10年が経過し、まちの変化や新たな施設の立地等、区の状況も変化しています。そのため、これまでの重点整備地区に加えて、新たな重点整備地区を指定し、面的なバリアフリー化を推進する必要があります。 まちの変化や更なるバリアフリー化を望む区民意識の変化を受けた更なるバリアフリー化の推進が必要です。 ○視点2 重点整備地区及び特定事業の追加 重点整備地区とバリアフリー化の整備に関する事業である特定事業について、区民の声や地域の新たなニーズを踏まえて追加を行い、更なる推進をめざします。 利用者の意見と実際の整備に乖離が起きないよう、利用者の意見を伺いながら、国の示す基準やガイドライン等の改正を踏まえて、港区ならではの坂道への対応や運河沿いの遊歩道の整備、年齢・性別・人種等を問わず多様な人々に対応した新たな取組を提案します。 16ページ ○課題3 思いやりのある心のバリアフリーが必要 バリアフリー法の改正において区市町村等による心のバリアフリーの推進が明記されたほか、障害者差別解消法、ユニバーサル社会実現推進法の施行や港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例の制定など近年ソフト面の取組も重要視されています。しかしながら、区民アンケートによる心のバリアフリーのキーワードの認知度は、約10%と低い結果となっています。道路管理者や交通事業者等と連携し、互いに思いやりのある心のバリアフリーの更なる推進が必要です。 ○視点3 心のバリアフリーの推進 障害者差別解消法、ユニバーサル社会実現推進法の施行や港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例の制定など、ソフト面の取組が重要視されています。バリアの解消においては、ハード面の整備に加え、ソフト面の取組を交通事業者や施設管理者等と連携し、互いに思いやりのある心のバリアフリーを推進します。 ○課題4 生活様式の変化に対応したバリアフリーが必要。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により生活様式が変化しており、密閉空間、密集場所、密接場面の3つの密を避けた施設利用等、新たな生活様式に対応した施設利用のあり方が求められています。 ○視点4 新しい生活様式に対応したバリアフリーの推進 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により生活様式が変化しており、3密を避けた施設利用への対応、バリアフリーを必要としている人が優先して利用できる環境を形成します。 17ページ 第3章 港区バリアフリー基本構想における基本方針 3の1.基本理念 共生社会の実現、社会的障壁の除去の追加など、バリアフリー法に基本理念が条文化されたことを踏まえ、区民にわかりやすい表現に改め、世界に認められるバリアフリー社会をめざします。 基本理念は、 誰もが安全・安心かつ円滑に移動でき いきいきと元気に暮らせる都市空間を形成するとともに お互いを尊重し、共生する社会の実現 とします。 3の2.基本方針 これまでの基本方針を推進することに加え、策定の課題と視点を踏まえ、基本理念の実現に向けて、以下の3つの基本方針を踏まえた取組を推進していきます。 基本方針1 誰もが利用しやすく、国際化にも配慮したユニバーサルデザインによる多様なニーズへの対応 ○方向性 ユニバーサルデザインの対象となる取組の範囲は広いため、港区バリアフリー基本構想におけるユニバーサルデザインの考え方を整理し、事業に取り組むことで、一人ひとりの多様性が尊重され、社会参加ができる環境を形成します。 ○取組 誰もが分かりやすいサイン表示や、やさしい日本語での表記等、ユニバーサルデザインを加速し、誰もが使いやすいシンプルで柔軟性のあるバリアフリー化を推進します。 港区バリアフリー基本構想におけるユニバーサルデザインの考え方を整理し、事業に取り組むことで、一人ひとりの多様性が尊重され、社会参加ができる環境を形成します。 第4章をご参照ください。 ○SDGsのゴールとの関係 ユニバーサルデザインに取り組むことで誰もが使いやすく、性別や障害による不平等の解消をめざします 該当するSDGsのゴールは、3.すべての人に健康と福祉を。5.ジェンダー平等を実現しよう。10.人や国の不平等をなくそう。17.パートナーシップで目標を達成しよう。です。 18ページ 基本方針A利便性・安全性を向上したバリアフリーの更なる加速化 ○方向性 重点整備地区と特定事業について追加を行い、更なるバリアフリー化を推進します。また、港区の特徴である坂道や水辺空間について歩きやすさ等のアクセス性の向上を継続して推進します。 ○取組 誰にとっても安全で移動しやすい経路の整備や施設内のバリアフリー化を図るなど、まち全体の利便性と安全性の向上を実現します。 IoTを活用した社会実験等に新たに取り組み、新しいバリアフリーのあり方を模索します。 歩きやすい坂道やアクセスしやすい水辺空間の形成により、生活の豊かさと利便性の向上をめざします。 第5章をご参照ください。 ○SDGsのゴールとの関係 公共施設や医療施設等の生活関連施設へのアクセスのしやすさや、働きやすさ、住み続けられるまちづくりをめざします。 該当するSDGsのゴールは、9.産業と技術革新の基盤をつくろう。11.住み続けられるまちづくりを。17.パートナーシップで目標を達成しよう。です。 基本方針B多様な世代の人々がお互いを助けあう心のバリアフリーの推進 ○方向性 バリアフリーのキーワードのひとつである心のバリアフリーはまだ広く認知されていません。更に心のバリアフリーを推進することでハード面の整備だけでなく思いやりの心を育てるため、これからの港区に必要な新たな取組を整理します。 ○取組 お互いを思いやり支え合う社会の浸透をめざし、関係者が広報・啓発、教育等を行い、思いやりの心を育成します。 高齢者、障害者等、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことができる地域共生社会を実現します。 新型コロナウイルス感染症対策を適切に行うとともに、特にバリアフリーを必要とするかたが優先して利用できる譲り合いの心を醸成します。 第6章をご参照ください。 ○SDGsのゴールとの関係 心のバリアフリーにより、世代や事業者等、多様な立場の人々が、互いに助け合うことのできる考えの浸透、パートナーシップの形成を図ります。 該当するSDGsのゴールは、3.すべての人に健康と福祉を。4.質の高い教育をみんなに。10.人や国の不平等をなくそう。16.平和と公正をすべての人に。17.パートナーシップで目標を達成しよう。です。 19ページ 3の3.計画期間 まちづくりに伴うバリアフリー環境整備は完了までに時間を要すること、また、港区まちづくりマスタープランの計画期間は20年と長期であり、まちづくり分野の計画や事業との整合性を図っていく必要があります。 そのため、計画期間は令和3年度から令和12年度までの10年間とします。 その中で、特定事業計画については、3年間の短期事業期間、6年間の中期事業期間とし、その節目においては、区の基本計画や地域保健福祉計画等の関連計画との整合性を図り、その都度事業の見直しを行います。 なお、事業期間は目安として統一的に設定したもので、各事業者が特定事業計画を策定する際は、施設の特性、整備スケジュールに沿った計画を定めることになります。そして、短期事業期間及び中期事業期間の終了時には各事業者が定める特定事業計画についてそのときの新たな課題や問題点を反映した見直しを依頼し、段階的かつ継続的な発展をめざしていきます。 20ページ 第4章 ユニバーサルデザインによる多様なニーズへの対応 4の1.ユニバーサルデザインとバリアフリーの関係 (1)ユニバーサルデザインとは ユニバーサルデザインは障害の有無、年齢、性別、人種等に関わらず、多様な人々が利用しやすいよう、あらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方に基づき、次の7つの原則によって構成された考え方です。 国はバリアフリー法改正と同様に東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定を契機に、ユニバーサルデザイン2020行動計画を平成29年2月に決定し、共生社会の実現に向けた大きな二つの柱として、心のバリアフリーの分野である、国民の意識やそれに基づくコミュニケーション等、個人の行動に向けて働きかける取組と、まちづくりの分野である、ユニバーサルデザインのまちづくりを推進する取組に取り組んでいます。 21ページ (2)ユニバーサルデザインとバリアフリーの関係 バリアフリーは高齢者、障害者等が障害によりもたらされるバリアの解消を目的としている考え方です。一方、ユニバーサルデザインは障害の有無、年齢、性別、人種等に関わらず多様な人々が利用しやすいようにあらかじめデザインするという考え方です。 平成30年5月のバリアフリー法の改正により、基本理念、第一条の二において、第一条の二 この法律に基づく措置は、高齢者、障害者等にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資すること及び全ての国民が年齢、障害の有無その他の事情によって分け隔てられることなく共生する社会の実現に資することを旨として、行われなければならない。と位置づけられたため、バリアフリーの対象となる人が従前より更に広がりました。 既存の障害を除去し、環境を改善するバリアフリーと、多様な人々が利用しやすいようあらかじめデザインするユニバーサルデザインの両方の考え方に基づく取組を推進することが求められている状況から、港区バリアフリー基本構想におけるユニバーサルデザインの考え方を整理します。 22ページ 4の2.ユニバーサルデザインの考え方と位置づけ (1)港区バリアフリ−基本構想におけるユニバーサルデザインの考え方 バリアフリー法では、これまでもユニバーサルデザインの考え方を踏まえた規定が盛り込まれています。また、世界中の様々な人が集う東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定を契機に、更なるユニバーサルデザインの考え方の検討が進められています。 港区バリアフリー基本構想においては、ユニバーサルデザインの取扱う範囲を整理し、明確にすることで、ユニバーサルデザインのまちづくりを加速し、多様性が尊重され、社会参加ができる環境の形成を図ります。 23ページ (2)ユニバーサルデザインの主な取組 ユニバーサルデザインは、多様な人々が利用しやすいよう、あらかじめ都市や生活環境をデザインする考え方に基づく取組のため、多様な分野にわたります。そのため、港区バリアフリー基本構想においては、移動等の円滑化に関するユニバーサルデザインを推進します。また、関連計画との事業連携を図ることにより、区全体のユニバーサルデザインの推進を図っていきます。 24ページ (3)ユニバーサルデザインの施策例 ユニバーサルデザインの位置づけを踏まえて、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた以下の事業を進め、多様なニーズに対応していきます。 @ハード事業 ユニバーサルデザインの視点を重視することで、円滑に移動できる施設整備の促進を図ります。 ○公共交通機関における地上出口の複数ルート化 バリアフリー化された経路が1つのみでは、公共交通機関の地上出入口から目的施設まで、バリアフリーの経路が確保されていたとしても、遠回りの経路を利用する必要がありました。 ホームから地上出入口まで複数の経路が確保されることで、車椅子やベビーカーの利用者、高齢者等がより移動しやすい環境になります。 ○電線類地中化 通行することはできますが、電柱により、幅員が狭くなっている歩道があります。 電線類地中化により、電柱が歩道から無くなり、より幅員が広く、誰もが歩きやすい歩道になります。 ○ベンチの設置 港区は坂が多いこともあり、段差等が少ない経路でも、体力を必要とする経路があり、高齢者や障害者等にとって負担となっています。 歩道や沿道の民間敷地にベンチを設置することで、休憩しながら歩くことのできる歩道になります。 25ページ ○多機能トイレの機能の分散 多機能トイレの設置により、誰でもトイレを利用できるよう、各建物等で整備されています。一方で、多機能トイレにオストメイト用流しやベビーベッド等の多くの機能が集約されることで、利用が集中し、必要としている利用者が利用できない状況があります。 一般トイレにベビーチェア等の分散が可能な機能を分散することにより、トイレ全体で多様な人々が使いやすい環境になります。 ○エレベーター周辺等の視覚障害者誘導用ブロック等の適切な配置 エレベーターまで、視覚障害者を誘導するために視覚障害者誘導用ブロックが設置されています。一方で、乗降口の前に設置してある場合、視覚障害者にとって、ボタンの位置が分かりにくく、利用しにくいだけではなく、車椅子やベビーカー、シルバーカー等の利用者にとっては通過しにくい障害となります。 あらかじめ障害のない環境を形成するため、エレベーターボタンの前に視覚障害者誘導用ブロックで誘導することで、視覚障害者誘導用ブロックを必要とする視覚障害者にとって利用しやすく、他の利用者の障害にならない適切なバリアフリーになります。 26ページ Aソフト事業 情報のユニバーサルデザイン化の充実を図り、多様な人々が利用しやすい環境を形成します。 ○心のバリアフリーの普及・啓発 ハード事業のバリアフリー化は整備に時間を要することが課題のひとつです。そのため、既存のバリアフリー設備を多様な人々が利用することができる環境の形成も必要です。 心のバリアフリーの普及・啓発により、ユニバーサルデザインの考え方である、障害の有無、年齢、性別、人種等に関わらず多様な人々が利用しやすいよう、利用者がお互いを理解して、助け合う環境形成の推進を図っていきます。 ○多言語化や「やさしい日本語」による港区バリアフリーマップや案内板等の情報発信 港区バリアフリーマップや案内板等について多言語化や誰にでも分かりやすく表現された日本語であるやさしい日本語を用いて、外国人の方も利用しやすい情報の発信に取り組みます。 港区バリアフリーマップは日本語と英語の2カ国語ですが、バリアフリーまち歩きMAP in 港区では、中国語とハングルを加えた4カ国語で作成する等、多様な人々が利用できるよう情報の充実を図っています。 ○Uni-Voice等を用いた情報発信 視覚障害者の方に必要な情報を発信するにあたっては、情報が多い場合に点字では多様なスペースを必要とし、また、点字に慣れていない方は読むことができない等の課題がありました。 専用機器以外にスマートフォンのアプリ等でも読み取ることができるUni-Voiceを用いることで、少ないスペースで必要な情報や多くの情報を視覚障害者の方に発信することができます。 港区バリアフリー基本構想においても、視覚障害者の方も読むことができるよう、Uni-Voiceを使用しています。 また、Uni-Voice以外にも点字やデータのテキスト化など様々なニーズに対応した情報の発信を行っていきます。 27ページ ○誰もが読み取ることができるピクトグラムの表示 文字・言語によらず対象物、概念または状態に関する情報を提供する図形です。同じピクトグラムを用いることで、視力の低下した高齢者や障害のあるかた、外国人観光客等も情報を得ることができます。 28ページ この頁では、誰もが読み取ることができるピクトグラムの表示として、JISZ8210に対応した案内用図記号を示しています。