○港区環境基本条例

平成十年三月三十日

条例第二十八号

港区は、活発な都市活動と多様な居住環境とが共存するまちとして発展してきた。また、歴史的な景観も多く、緑や水辺などの貴重な自然環境も有するまちである。

しかし、さまざまな社会経済活動が営まれる中で資源やエネルギーが大量に消費されることにより、港区にも大きな環境への負荷がもたらされている。

もとより区民は、人と自然とが共生することのできる良好な環境のもとに健康で安全かつ快適な生活を営む権利を有するとともに、かけがえのない環境を守り、より良好な環境を将来の世代に引き継いでいくべき責務を負っている。

今こそ、すべての人びとが日常の生活や事業活動の中で、自らの行動を考え、創意と工夫によって、環境にやさしい継続的な行動をとることが求められている。

このような認識の下に、環境への負荷の少ない、居住と都市活動とが調和した居住環境都市をつくりあげていくために、ここに、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、環境の保全について基本理念を定め、区、区民及び事業者の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本的な事項を定めることにより、その施策を総合的かつ計画的に推進し、もって区民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要とする良好な環境を実現することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 環境の保全 良好な環境を維持し、回復し、及び創造することをいう。

 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に基づく生活環境の侵害であって、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭等によって、人の生命若しくは健康が損なわれ、又は人の快適な生活が阻害されることをいう。

(基本理念)

第三条 環境の保全は、次の各号に掲げる基本理念に基づき行われなければならない。

 区民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要とする良好な環境を実現し、これを将来の世代へ継承して行くことを目的として行うこと。

 人と自然とが共生し、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な都市を構築することを目的として、すべての者の積極的な取組によって行うこと。

 すべての事業活動及び日常生活において行うこと。

(区の責務)

第四条 区は、環境の保全を図るため、次に掲げる事項に関し基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 公害の防止に関すること。

 大気、水、動植物等からなる自然環境の保全に関すること。

 人と自然との豊かなふれあいの確保、良好な景観の保全、歴史的文化的遺産の保全等に関すること。

 資源循環、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量に関すること。

 地球の温暖化の防止、オゾン層の保護等の地球環境の保全に関すること。

 前各号に掲げるもののほか、環境への負荷の低減に関すること。

(区民の責務)

第五条 区民は、その日常生活において、環境への負荷の低減並びに公害の防止及び自然環境の適正な保全に努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、区民は、環境の保全に自ら努めるとともに、区が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

(事業者の責務)

第六条 事業者は、事業活動を行うときは、環境への負荷の低減に努めるとともに、その事業活動に伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するため、その責任において必要な措置を行う責務を有する。

2 事業者は、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うときは、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するために必要な措置を行うよう努めなければならない。

3 前二項に定めるもののほか、事業者は、その事業活動に関し、環境の保全に自ら努めるとともに、区が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

(環境基本計画)

第七条 区長は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全についての基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 環境の保全に関する目標

 環境の保全に関する施策の方向

 前二号に掲げるもののほか、環境の保全に関する重要事項

3 区長は、環境基本計画を策定するときは、区民及び事業者(以下「区民等」という。)の意見を反映することができるよう必要な措置を行うものとする。

4 区長は、環境基本計画を策定するときは、あらかじめ港区環境審議会の意見を聴かなければならない。

5 区長は、環境基本計画を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。

6 前三項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

(環境行動指針)

第八条 区長は、区及び区民等が環境の保全に関して配慮すべき事項を、環境の保全についての行動指針(以下「環境行動指針」という。)として策定しなければならない。

2 区長は、環境行動指針を策定するときは、区民等の意見を反映することができるよう必要な措置を行うものとする。

3 区長は、環境行動指針を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。

4 前二項の規定は、環境行動指針の変更について準用する。

(施策の策定等にあたっての配慮)

第九条 区は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するときは、環境基本計画及び環境行動指針との整合を図るものとする。

2 区は、環境の保全に関する施策について総合的に調整し、及び推進するために必要な措置を行うものとする。

(環境影響調査の措置)

第十条 区は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を実施しようとする者に対し、その事業の実施前に環境の保全について適切な配慮がなされるよう必要な措置を行うものとする。

(資源循環の推進)

第十一条 区は、環境への負荷を低減するため、区民等による資源循環が促進されるよう必要な措置を行うものとする。

2 区は、環境への負荷を低減するため、区の施設の建設及び維持管理その他の事業を実施するときは、資源循環、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量に努めなければならない。

(区民等の意見の反映)

第十二条 区は、環境の保全に関する施策に、区民等の意見を反映することができるよう必要な措置を行うものとする。

(情報の提供)

第十三条 区は、環境の保全に資するため、必要な情報を区民等に適切に提供するよう努めるものとする。

(区民等の自発的な活動の促進)

第十四条 区は、区民等による自発的な環境の保全に関する活動が促進されるよう必要な措置を行うものとする。

(環境学習の推進)

第十五条 区は、区民等が環境の保全についての理解を深めるとともに、区民等による自発的な環境の保全に関する活動が促進されるように、環境の保全に関する学習の推進を図るものとする。

(調査及び研究の実施等)

第十六条 区は、環境の保全に関する施策を適切に実施するため、公害の防止、自然環境の保全その他の環境の保全に関する事項について、情報の収集並びに調査及び研究に努めるものとする。

(監視及び測定等)

第十七条 区は、環境の状況を的確に把握するとともに、そのために必要な監視及び測定等の体制を整備するものとする。

2 区は、前項の規定により把握した環境の状況を公表するものとする。

(国及び東京都等との協力)

第十八条 区は、環境の保全を図るため、国、東京都その他の地方公共団体と協力し、その推進に努めるものとする。

(地球環境の保全の推進)

第十九条 区は、地球環境の保全に資する施策を国等と連携して推進するものとする。

(環境審議会)

第二十条 環境の保全に関する基本的事項について調査審議するため、区長の付属機関として港区環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、区長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。

 環境基本計画に関すること。

 一般廃棄物の処理に関する基本方針その他の重要事項

 前二号に掲げるもののほか、環境の保全に関する基本的事項

3 審議会は、環境の保全に関し、区長に意見を述べることができる。

4 審議会は、環境の保全について学識経験を有する者、区民、事業者及び区議会議員のうちから区長が委嘱する委員十四人以内をもって組織する。

5 委員の任期は、二年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、区規則で定める。

(委任)

第二十一条 この条例の施行に関し必要な事項は、区規則で定める。

1 この条例は、平成十年四月一日から施行する。

2 この条例の施行の際、現に存する港区環境基本計画は、第七条の規定により策定された環境基本計画とみなす。

(平成一一年一二月一六日条例第三二号)

1 この条例は、平成十二年四月一日から施行する。

2 この条例の施行の日以後平成十二年八月三十一日までの間に、この条例による改正後の東京都港区環境基本条例第二十条第四項の規定により新たに委嘱される東京都港区環境審議会の委員の任期は、同条第五項の規定にかかわらず、平成十二年八月三十一日までとする。

港区環境基本条例

平成10年3月30日 条例第28号

(平成11年12月16日施行)