○行政手続法施行の準備に関する事務処理要領

平成6年8月10日

6港総総第370号

港区における行政手続法(平成5年法律第88号。以下「法」という。)の施行に向けての準備作業(審査基準、処分基準、標準処理期間の設定、公表等)については、本要領により進められたい。

なお、法の直接の適用がない条例等を根拠とする処分等については、その施行時期、内容等は未確定ではあるが、施行に当たり必要となる作業は、法律等を根拠とするものと同様のものとなると思われるので、本要領により準備を進められたい。

第1 審査基準の設定、公表

1 基本的考え方

(1) 趣旨

従来、行政庁の内部的なものにとどまることが多かった許認可等の審査基準を設定、公表することにより、行政手続の公正性の確保、透明性の向上を図る。

(2) 基本的考え方

審査基準を設定、公表し、法の趣旨に沿った整備を図るものとする。

2 基準設定の考え方

(1) 設定の主体

ア 審査基準は、個々の処分について法令の定めにしたがって判断するため、当該処分庁が自らの責任と判断によって定めるものである。

当区が処分庁となっている許認可等については、各所管課において、当該処分についての審査基準を自主的に設けるものとする。

イ 法律等を根拠とする処分について、所管の省庁から審査基準に関する指針、通達等が出されることが考えられる。その場合には、それらを踏まえ、基準を設定すること。

(2) 基準の内容

審査基準は、許認可等を行う必要があるかどうかをその法令の定めにしたがって判断するための基準であって、どのような内容の申請があった場合に、法令に定められた許認可等の要件に該当し、許認可等をすることになるかどうかを定めるものである。

(3) 基準設定の要否

ア 原則として設定する。

現在、審査基準が設定されていない場合は、許認可等に当たっての方針や考慮事項等法令の定め以上に何らかの形で具体化し得るものがないかどうかを検討する必要がある。

イ 設定しないことが許されるのは、次の場合である。

(ア) 許認可等をするかどうかの判断基準が法令の定めにおいて具体的に規定し尽くされている場合には、改めて基準を設定する必要はない。

(イ) 処分の先例がなく、法令の定め以上に具体化することが困難な場合は、当面審査基準を設定しないこともやむを得ない。

(4) 審査基準の具体性

ア 審査基準は、「法令の定め」を許認可等の性質に照らして、できる限り可能なレベルまで具体化するものである。申請しようとする者が、申請に当たり何を準備すればよいのかという観点から、

・ 誤解のおそれがない一義的な表現となっているか

・ 表現が平易かつ明白でわかりやすいものとなっているか

・ 法令の内容、趣旨を正確に反映したものとなっているか

等を考慮して整備する。

イ 具体化の表現は、処分の性質によって異なる。

(ア) 法令により要件を厳格に定めている処分にあっては、審査基準は、一義的な判断が可能な程度まで具体化することが望ましい。

(イ) 行政庁に広範な裁量が与えられている処分では、個々の申請についての当てはめ基準の作成が困難なものもあると考えられるが、その場合にも、審査に当たって、どのような要素を考慮し、個々の要素はどの程度の評価を与えられることになるのかといったことをできる限り示しておくことが必要である。

(5) 基準設定の形式

基準設定については、特段形式は問わないこととなっているが、公表できるよう文書化すること。

現在、各所管課で許認可等の実務に当たり、使用している事務処理要領等を活用してもよいが、それらに行政指導が含まれている場合には、行政指導の部分を除外したものとすること。

(6) 基準設定の時期

ア 法律等を根拠とする事務については、法施行日(平成6年10月1日予定)までに設定する。

イ 法施行日までに審査基準が設定できない場合には、その事情を具体的に書き表して、求められたらいつでも提示できるようにしておくこと。

3 審査基準の公表の考え方

(1) 基本的考え方

ア 設定した基準は、これを公にする。

イ 審査基準の「公表」は、法解釈上、秘密にしないという意味で、必ずしも積極的に周知することまで求めるものではないが、当区においては、申請者の利便性を考慮し、申請者が自由に閲覧できるように、各申請窓口において審査基準を記載した文書を備え付けておくこととする。

(2) 公表の方法

各部ごとに所管する課の審査基準を簿冊形式としてとりまとめ、申請者が自由に閲覧できるように、各申請窓口に簿冊を備え付ける。また、審査基準は、関連の法令の規定の解釈に関する文書と一体のものとして合わせて申請者に示すことができるように用意しておく必要がある。

第2 処分基準の設定、公表

1 基本的考え方

(1) 趣旨

行政手続の公正性の確保、透明性の向上という点では、審査基準と同じである。

ただし、不利益処分の場合、処分に当たって個別具体的な事情を考慮しなければならないため、法令の定め以上に具体化することが困難なものや、公表することによって脱法行為を助長するおそれがあり公表になじまないものもある。

このため、法では、設定、公表ともに努力義務としている。

(2) 基本的考え方

不利益処分の処分基準についても、原則として設定、公表する。

ただし、不利益処分の性質により、処分基準の設定、公表が困難なものについては、個別に配慮する。

2 基準設定の考え方

(1) 設定の主体

審査基準の場合と同じ。

(2) 基準の内容

処分基準は、不利益処分の適否や要否、その内容や程度を定めるものであり、具体的には、次の点を定めることになる。

ア どのような事実が生じた場合に、法令に定められた要件に該当し、処分をすることになるか

イ 不利益処分の原因となる一定の事実が生じた場合に、どのような処分の内容とするのか

ウ また、どの程度の処分とするのか

(3) 基準設定の要否

ア 処分基準の設定は努力義務とされているが、合理的な理由がなく設定しないことは許されない点に十分留意する必要がある。

イ 設定しないことが許される場合

(ア) 不利益処分をするかどうかの判断基準が法令の定めにおいて具体的に規定し尽くされている場合には、改めて基準を設定する必要はない。

(イ) 当該不利益処分の性質上、あらかじめ画一的な基準を定めることが技術的に困難なもの(個別的な情状を総合的に勘案して、処分の軽重を決定するような場合等)は、処分基準を設定しないこともやむを得ない。

(ウ) 不利益処分の先例がなく、法令の定め以上に具体化することが困難な場合は、当面、処分基準を設定しないこともやむを得ない。

ウ 基準を設定しない場合は、その理由を示せるよう準備しておく。

(4) 処分基準の具体性

不利益処分の場合、一般に行政庁の広範な裁量にゆだねられているものが多いと考えられるが、処分基準を設定する場合には、基本的には審査基準の場合と同様に、少なくともどのような要素を考慮して処分要件に該当すると判断するのか、その考え方を示す必要がある。

(5) 基準設定の形式

審査基準の場合と同じ。

(6) 基準設定の時期

審査基準の場合と同じ。

3 処分基準の公表の考え方

(1) 基本的考え方

ア 設定された処分基準は、原則として、これを公表する。

イ ただし、公にすることの弊害等、当該不利益処分の特殊性については、配慮する。

(2) 公表の方法

審査基準の場合と同じ。

(3) 公表を要しない場合

不利益処分の名あて人の防御権を犠牲にしても、公益性を優先させるべき場合であり、公表することにより脱法的な行為が助長される可能性が高い場合等が考えられる。

やむを得ない理由により公表できない場合は、その事情を説明できるよう準備しておく必要がある。

第3 標準処理期間の設定、公表

1 基本的考え方

(1) 趣旨

行政運営の適正化の観点から、申請に対する処理の透明性及び迅速性を確保するため、申請が法令に定められた提出先機関に到達してから、当該申請に対する処分を行うまでに要する期間の目安を定めるべき旨を規定したものである。

(2) 基本的考え方

標準処理期間を設定、公表し、法の趣旨に沿った整備を図るものとする。

2 標準処理期間設定の考え方

(1) 設定の意義

申請に対する処理の透明性の向上を図るとともに、事務処理の迅速かつ適正な執行を確保する目的から、標準処理期間の設定を行うものである。

(2) 設定の主体

審査基準と同様に、申請に対する処分権限を有する所管課において設定する。

(3) 設定の時期

法律等を根拠とする事務については、法施行日(平成6年10月1日)までに設定する。

(4) 設定に当たっての留意点

ア 標準処理期間の算定方法

標準処理期間は、「許認可等の申請が、法令に定められた提出先機関の事務所に到達した時点」を起算日とする。

なお、標準処理期間は、適法な申請を処理することを前提とするものであるので、申請を補正するために要する期間は含まない。

イ 協議機関等がある場合の取扱い

協議機関等がある場合には、それぞれの機関において処理に要する期間を併記するとともに、それらを含めた全体としての標準処理期間を定めることとする。

ウ 国の指針等で標準処理期間が定められている場合の取扱い

機関委任事務等に係る処分についての標準処理期間が、国からの指針等で具体的に示されている場合は、それにより設定すること。

エ 申請に対する処分についての標準処理期間が、法令で定められている場合は、改めて標準処理期間を設定する必要はない。

オ 処理日数の積算

標準処理期間の処理日数の積算に当たっては、下表を参考にして行うものとする。

〔積算例〕

申請書・添付書類の形式審査及び内容審査

現地調査

審査会、関係機関等との調整

協議機関等に要する日数

処分案作成

起案→決定

決定→浄書→送付(交付)

3 標準処理期間の公表の考え方

(1) 基本的考え方

設定した標準処理期間は、すべて公表する。

(2) 公表の方法

審査基準と同様の方法とする。

この要領は、平成6年8月10日から施行する。

行政手続法施行の準備に関する事務処理要領

平成6年8月10日 港総総第370号

(平成6年8月10日施行)

体系情報
要綱集/第1類 規/第2章
沿革情報
平成6年8月10日 港総総第370号