○港区VDT作業労働衛生管理基準

平成25年9月30日

25港総人第2217号

第1章 総則

(目的)

第1条 この基準は、VDT作業に係る作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育等について必要な事項を定め、職員の健康及び安全の確保を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この基準において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) VDT(Visual Display Terminals) コンピュータに接続される画面表示装置(以下「ディスプレイ」という。)及びコンピュータに文字を入力する装置(以下「キーボード等」という。)により構成される機器をいう。

(2) VDT作業 VDT機器を使用して、データの入力、検索及び照合並びに文書、画像等の作成及び編集並びにプログラミング、監視等を行うことをいう。

(管理監督者の責務等)

第3条 VDT作業に従事する職員(以下「作業職員」という。)を直接指揮監督する者(以下「管理監督者」という。)は、この基準に定める事項を遵守し、快適な作業環境を維持するとともに、作業職員の心身の健康を確保するよう努めなければならない。

2 管理監督者は、この基準の実効性をより高めるため、必要に応じ港区安全衛生委員会(以下「安全衛生委員会」という。)の承認を得て、基準の運用細目を定めることができる。

(作業職員の役割)

第4条 作業職員は、この基準に基づきVDT作業に従事するとともに、管理監督者が実施する衛生管理措置に協力しなければならない。

(安全衛生委員会の役割)

第5条 安全衛生委員会は、良好な職場環境確保の立場から、VDT作業に伴う労働衛生管理基準の遵守状況の把握その他のVDT作業に係る健康管理等に必要な調査、審議及び助言を行うものとする。

2 安全衛生委員会は、作業環境管理等の状況について、定期的に点検を行うものとする。

第2章 作業環境管理

(作業環境管理)

第6条 管理監督者は、作業職員の心身の負担を軽減し、作業職員が支障なく作業を行うことができるよう、次条から第10条までに規定するVDT作業に適した作業環境を整備するための措置(以下これらの措置を「作業環境管理」という。)を講じるものとする。

(照明及び採光)

第7条 照明及び採光については、次に掲げる措置を講じることにより、適切な明るさを保つものとする。

(1) 室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないよう配慮すること。

(2) ディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。この場合において、ディスプレイ画面の明るさ並びに書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさとの差は、できるだけ小さくなるよう配慮すること。

(3) ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光その他の光源による光が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド、カーテン等を設け、適切な明るさとなるよう配慮すること。

(グレアの防止)

第8条 ディスプレイについては、必要に応じ、次に掲げる措置を講じる等により、グレア(まぶしさ)の防止を図るものとする。

(1) ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整させること。

(2) 反射防止型ディスプレイを用いること。

(3) 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。

(4) その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。

(騒音低減措置)

第9条 VDT機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音を低減するための措置を講じるものとする。

(換気等)

第10条 換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について、事務所衛生基準規則に定める措置等を講じるものとする。

第3章 作業管理

(作業管理)

第11条 作業職員の心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次条から第15条までに規定する作業時間の管理並びに作業の特性及び個々の作業職員の特性に応じたVDT機器、関連什器を整備する措置(以下これらの措置を「作業管理」という。)を講じるものとする。

(作業時間等)

第12条 視覚負担を始めとする心身の負担を軽減するため、ディスプレイ画面を注視する時間及びキーを操作する時間をできるだけ短くすることが望ましいことから、他の作業を組み込むこと、他の作業とのローテーションの実施等により、一日の連続VDT作業時間が短くなるように対応する。

2 VDT作業従事に当たっては、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分間ないし15分間のVDT作業休止時間を設け、一連続作業時間内には、1分間ないし2分間のVDT作業の小休止を1回又は2回程度設けるものとする。

3 管理監督者は、作業職員の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業職員の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう対応する。

4 管理監督者は、VDT作業以外の作業を組み込む等の工夫でVDT作業の連続作業時間を細分化する等の措置を講じることにより、作業職員の健康が害されないよう配慮しなければならない。

5 管理監督者は、過重労働による健康障害の防止を図るため、適切な作業時間管理を行うことを要する。

(VDT機器)

第13条 VDT機器を事業場に導入する際には、作業職員への健康影響を考慮し、作業職員が行う作業に最も適した機器を選択し導入する。

2 デスクトップ型機器を使用する場合、ディスプレイは、次に掲げる要件を全て満たすものとする。

(1) 目的とするVDT作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。

(2) フリッカー(画面のちらつき)は、知覚されないものであること。

(3) ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは、作業職員が容易に調整できるものであること。

3 デスクトップ型機器を使用する場合、キーボード等は、次に掲げる要件を全て満たすものとする。

(1) キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業職員によって調整できること。

(2) キーボードのキーは、文字が明瞭で読みやすく、キーの大きさ及びキーの数がキー操作を行うために適切であること。

(3) マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやすく操作がしやすいこと。

(4) キーボードのキー及びマウスのボタンは、ストローク及び押下力が適当であり、操作したことを作業職員が知覚し得ること。

(5) 目的とするVDT作業に適した入力機器を使用できるようにすること。

(6) 必要に応じ、パームレスト(リストレスト)を利用できるようにすること。

4 ノート型機器を使用する場合は、次に掲げる要件を全て満たすものとする。

(1) 目的とするVDT作業に適したノート型機器を適した状態で使用させること。

(2) ノート型機器のディスプレイは、第2項の要件に適合したものを用いること。

(3) 入力機器は、前項の要件に適合したものを用いること。ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないため、小型のノート型機器で長時間のVDT作業を行う場合については、外付けキーボードを使用すること。

(4) 必要に応じて、マウス等を利用できるようにすること。

(5) 数字を入力する作業が多い場合は、テンキー入力機器を利用できるようにすること。

5 携帯情報端末については、長時間のVDT作業に使用することは避けるよう努める。

6 ソフトウェアは、次に掲げる要件を全て満たすものを用いる。

(1) 目的とするVDT作業内容、作業職員の技能、能力等に適合したものであること。

(2) 作業職員の求めに応じて、ヘルプ機能を用いる等、作業職員に対して、適切な説明が与えられるものであること。

(3) 作業上の必要性、作業職員の技能、好みに応じて、文字等の大きさ、色等がインターフェイス用のソフトウェアの設定により容易に変更可能なものであること。

(4) 操作ミスによりデータ等が消去された場合に、入力したデータを容易に復元することが可能であること。

7 椅子は、次に掲げる要件を全て満たすものを用いる。

(1) 安定しており、かつ、容易に移動できること。

(2) 床からの座面の高さは、作業職員の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。

(3) 複数の作業職員が交替で同一の椅子を使用する場合には、高さの調整が容易であり、調整中に座面が落下しない構造であること。

(4) 適当な背もたれを有し、かつ、その傾きを調整できること。

(5) 必要に応じて適当な長さの肘掛けを有していること。

8 机又は作業台は、次に掲げる要件を全て満たすものを用いる。

(1) 作業面は、キーボード、書類、マウスその他VDT作業に必要なものが適切に配置できる広さであること。

(2) 作業職員の脚の周囲の空間は、VDT作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。

(3) 高さの調整ができない机又は作業台を使用する場合、床からの高さは作業職員の体形に合った高さとすること。

(4) 高さの調整が可能な机又は作業台を使用する場合、床からの高さは作業職員の体形に合った高さに調整できること。

(調整)

第14条 管理監督者は、作業職員に自然で無理のない姿勢でVDT作業を行わせるため、次に掲げる事項を作業職員に留意させ、椅子の座面の高さ、キーボード、マウス、ディスプレイの位置等を総合的に調整させる。

(1) 椅子に深く腰を掛けて背もたれに背を十分に当て、履物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。

(2) 椅子と大腿部膝側側面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり、大腿部に無理な圧力が加わらないようにすること。

(3) ディスプレイはおおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。

(4) ディスプレイは、その画面の上端が目の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすること。

(5) ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視野範囲になるようにすること。

(6) ディスプレイは、作業職員にとって好ましい位置、角度、明るさ等に調整すること。

(7) ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮し、文字高さがおおむね3mm以上とすること。

(8) マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業職員の技能、好みに応じて適切な速度に調整すること。

(9) ソフトウェアにより表示容量、表示色数、文字等の大きさ及び形状、背景、文字間隔、行間隔等は、作業の内容、作業職員の技能等に応じて、個別に適切なレベルに調整すること。

(機器の点検等)

第15条 管理監督者は、作業環境を常に良好な状態に維持し、VDT作業に適したVDT機器等の状況を確保するため、次に掲げるところにより点検及び清掃を行わせ、必要に応じて改善措置を講じる。

(1) 日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行うこと。

(2) 照明及び採光、グレアの防止、騒音の低減、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去等の措置状況並びにディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の調整状況について定期に点検すること。

(3) 日常及び定期に作業場所、VDT機器等の清掃を行い、常に適正な状態に保持すること。

第4章 健康管理

(健康診断)

第16条 作業職員の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業職員に対して健康診断を実施する。

2 新たにVDT作業を行うこととなった作業職員の配置前の健康状態を把握し、その後の健康管理を適正に進めるため、次に掲げる健康診断を行う。

(1) 業務歴の調査

(2) 既往歴の調査

(3) 自覚症状の有無の調査

 眼疲労を主とする視器に関する症状

 上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状

 ストレスに関する症状

(4) 眼科学的検査

 視力検査(5m視力の検査・近見視力の検査)

 屈折検査

 眼位検査

 調節機能検査(近点距離の測定により調節機能を測定する。)

(5) 筋骨格系に関する検査

 上肢の運動機能、圧痛点等の検査

 その他医師が必要と認める検査

3 作業職員の健康状態を定期的に把握し、継続的な健康管理を適正に進めるため、作業職員に対して1年以内ごとに1回、定期に、次に掲げる調査及び検査を行う。

(1) 業務歴の調査

(2) 既往歴の調査

(3) 自覚症状の有無の調査

 眼疲労を主とする視器に関する症状

 上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状

 ストレスに関する症状

(4) 眼科学的検査

 視力検査(5m視力の検査・近見視力の検査)

 その他医師が必要と認める検査

(5) 筋骨格系に関する検査

 上肢の運動機能、圧痛点等の検査

 その他医師が必要と認める検査

(健康診断結果に基づく事後措置)

第17条 健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対して保健指導等の適切な措置を講じるとともに、予防対策の確立を図る。

2 業務歴の調査、自他覚症状、各種検査結果等から愁訴の主因を明らかにし、必要に応じ、保健指導、専門医への受診指導等により健康管理を進めるとともに、作業方法、作業環境等の改善を図る。この場合において、当該愁訴の要因が、職場内のみならず職場外において認められる場合についても、必要な保健指導を行う。

3 VDT作業の視距離に対して視力矯正が不適切な者には、支障なくVDT作業ができるように必要な保健指導を行う。

4 作業職員の健康のため、VDT作業を続けることが適当でないと判断される者又はVDT作業に従事する時間の短縮を要すると認められる者等については、産業医等の意見を踏まえ、健康保持のための適切な措置を講じる。

(健康相談)

第18条 前条第4項の規定により講じる措置のほか、VDT作業に関する健康相談が作業職員からあった場合は、産業医又は保健師が随時受けるものとし、適切な保健指導を実施するものとする。

2 作業職員が眼科若しくは整形外科領域の疾病にかかっている場合若しくは既往症歴のある場合又は健康上問題がある等の場合において、当該職員からVDT作業に従事できないとの申出があったときは、主治医等の医学的判断を参考に産業医と協議の上、適切な就労上の配慮を行うものとする。

(職場体操)

第19条 就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動を行うことが望ましい。

第5章 労働衛生教育

(労働衛生教育)

第20条 労働衛生管理のための諸対策の目的と方法を作業職員に周知することにより、職場における作業環境・作業方法の改善、適正な健康管理を円滑に行い、及びVDT作業による心身への負担の軽減を図ることができるよう、作業職員に対して、次に掲げる労働衛生教育を実施する。

(1) VDT作業の健康への影響

(2) 照明、採光及びグレアの防止

(3) 作業時間等

(4) 作業姿勢

(5) VDT機器等の調整・方法

(6) 作業環境の維持管理

(7) 健康診断とその結果に基づく事後指導

(8) 健康相談の体制

(9) 職場体操等の実施

(10) その他VDT作業に係る労働衛生上留意すべき事項

2 管理監督者に対する労働衛生教育は、次のとおりとする。

(1) 監督者の役割と心構え

(2) 労働衛生管理の概論

(3) VDT作業の健康への影響

(4) 照明、採光及びグレアの防止

(5) 作業時間等

(6) 作業姿勢

(7) VDT機器等の調整・方法

(8) 作業環境の維持管理

(9) 健康診断とその結果に基づく事後指導

(10) 健康相談の方法

(11) 職場体操等の必要性と方法

(12) 作業者に対する教育の方法

(13) 配慮事項等

(14) その他VDT作業に係る労働衛生上留意すべき事項

第6章 配慮事項等

(高年齢の職員に対する配慮事項)

第21条 高年齢の作業職員については、照明条件、ディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業職員ごとに見やすいように設定するとともに、過度の負担とならないように作業時間、作業密度等に関して配慮する。

2 前項に定めるところによるほか、作業の習熟の速度が遅い作業職員については、当該習熟速度に合わせて追加の教育及び訓練を実施する等により配慮する。

(障害を有する職員に対する配慮事項)

第22条 VDT作業の入力装置であるキーボード、マウス等が使用しにくい障害等を有する作業職員については、音声入力装置等を使用できるようにする等の必要な対策を講じる。

2 前項に定めるところによるほか、適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な作業職員については、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにする等の必要な対策を講じる。

(妊産婦である職員に対する配慮事項)

第23条 管理監督者は、作業職員が妊婦であることが判明した時点又は時差出勤の申出があった時点で当該職員の意見を十分に聴き、VDT作業からの除外を希望する旨の申出があった場合は、当該作業からの除外措置等を講じる。

2 前項に定めるところによるほか、同じ姿勢で拘束されることも母体にとって好ましくないため、妊婦の作業職員は、通常の作業職員よりも頻繁に作業休止時間を取らせ、1日の総作業時間についても配慮する。

3 産婦(出産後おおむね6か月間)についても、妊婦の場合と同様に配慮する。

1 この基準は、平成25年10月1日から施行する。

2 VDT作業労働衛生管理基準(平成12年4月1日12港政人第16号の43)は、廃止する。

港区VDT作業労働衛生管理基準

平成25年9月30日 港総人第2217号

(平成25年10月1日施行)