○港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例

令和元年十月十七日

条例第三十号

手話は、音声言語ではなく、手や指、体の動き、顔の表情を組み合わせて、視覚的に表現される独自の文法体系を持つ言語であり、特にろう者にとっては、文化を創造し、生きるために不可欠なものとして大切に受け継がれてきた言語である。

かつては、手話を習得し、使用することが制限されていた時代があった。近年では、障害者の権利に関する条約や障害者基本法の改正により手話が言語として位置付けられたが、手話が言語であることの普及をはじめとしたより一層の理解の促進が必要である。

また、障害には様々な特性があり、話した内容を要約し文字で表示する手段や文字を音声で読み上げる手段など、障害の特性に応じた意思疎通のための手段がある。障害者が安心して暮らすことができるようにするためには、障害者が自由に情報の取得や意思疎通のための手段を選択することができる環境の整備を更に進めることが重要である。

港区は、全ての人々に対し、手話が言語であることの理解を促進し、及び身体障害、知的障害、精神障害その他の障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用を促進することにより、障害者が住み慣れた地域で、自分らしくいきいきと安心して暮らすことができる地域共生社会を実現する固い決意を込めて、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関し、基本理念を定めるとともに、区の責務並びに区民等及び事業者の役割を明らかにすることにより、障害者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる地域共生社会を実現することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 意思疎通手段 手話、要約筆記、筆談、点字、拡大文字、平易な表現その他の障害者が日常生活及び社会生活において使用する意思疎通の手段をいう。

 区民等 区内に居住し、勤務し、在学し、又は滞在する者をいう。

 事業者 営利又は非営利の別にかかわらず、区内において事業活動を行う個人、法人又は団体をいう。

 学校等 区内の学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。)、保育所(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所をいう。)その他これらに準ずる施設をいう。

(基本理念)

第三条 障害者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる地域共生社会を実現するため、次に掲げる事項を基本理念として定める。

 手話が言語であることの理解の促進は、手話が独自の文法体系を持つ言語であるという認識の下に行うこと。

 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進は、障害者の多様な意見及び要望に合わせたものを、障害者が自ら選択する機会を保障することを基本として行うこと。

(区の責務)

第四条 区は、手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する施策を総合的かつ効果的に実施するものとする。

2 区は、前項に規定する施策の実施に当たり、関係機関との連携を図るとともに、区民等及び事業者が参画し、及び協働する取組を推進するものとする。

3 区は、緊急時及び災害発生時においても、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段が利用される地域共生社会の実現に向けた取組を行うものとする。

4 区は、第一項に規定する施策に関し、区の職員が自ら模範となり行動することができるよう当該職員の育成を図るものとする。

(区民等の役割)

第五条 区民等は、基本理念に対する理解を深め、区が実施する施策に参画し、及び協働するよう努めるものとする。

2 区民等は、日常生活において、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するよう努めるとともに、緊急時及び災害発生時においても、共助の理念に基づき、当該意思疎通手段を利用するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第六条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、区が実施する施策に参画し、及び協働するよう努めるものとする。

2 事業者は、その事業活動に関し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用により、障害者が利用しやすいサービスを提供し、及び事業を行うよう努めるものとする。

3 事業者は、緊急時及び災害発生時においても、共助の理念に基づき、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を利用するよう努めるものとする。

(施策の基本方針)

第七条 区は、第四条に定める区の責務を果たすため、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第三項に規定する市町村障害者計画において、次に掲げる施策について定め、これらを総合的かつ計画的に推進し、その進捗を管理するものとする。

 手話が言語であることの理解の促進に関する施策

 障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する施策

 前二号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

(手話が言語であることの理解の促進)

第八条 区は、区民等又は事業者が手話が言語であることの理解の促進に関する学習会等を開催する場合は、必要な支援を行うものとする。

2 区は、学校等において幼児、児童、生徒等に対し、手話が言語であることの理解の促進に関する教育等が実施される場合には、必要な支援を行うものとする。

3 区は、区民等及び事業者に対し、手話が言語であることの理解の促進に関する情報の発信を行うものとする。

4 区は、手話が言語であることの理解の促進に関する事業者の自主的な取組を促進するため、必要な情報の提供及び助言を行うものとする。

5 区は、区民等が手話が言語であることの理解の促進をすることができるよう、区民等及び事業者と協働して、手話通訳者等(手話通訳者及び手話通訳士をいう。)及びその指導者の確保及び養成を行うものとする。

(障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進)

第九条 区は、区民等又は事業者が障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する学習会等を開催する場合は、必要な支援を行うものとする。

2 区は、学校等において幼児、児童、生徒等に対し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する教育等が実施される場合には、必要な支援を行うものとする。

3 区は、障害者が日常生活及び社会生活において容易に情報を取得し、及び円滑に意思疎通を図ることができるよう、区民等及び事業者に対し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する情報の発信を行うものとする。

4 区は、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の利用の促進に関する事業者の自主的な取組を促進するため、必要な情報の提供及び助言を行うものとする。

5 区は、障害者が地域社会において安心して日常生活及び社会生活を営むことができるよう、区民等及び事業者に対し、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段を学ぶ機会を提供するものとする。

6 区は、緊急時及び災害発生時に障害者が感じる不安を解消するため、障害者が情報を円滑に取得することができるよう、区民等及び事業者とともに、障害の特性に応じた多様な意思疎通手段により情報を提供できる体制づくりに努めるものとする。

この条例は、令和元年十二月一日から施行する。

港区手話言語の理解の促進及び障害者の多様な意思疎通手段の利用の促進に関する条例

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(令和元年12月1日施行)