○港区民の生活環境を守る建築物の低炭素化の促進に関する条例

令和二年三月十日

条例第九号

目次

第一章 総則(第一条―第五条)

第二章 建築物の新築等に係る環境配慮の措置(第六条―第十四条)

第三章 事業所の二酸化炭素排出量等の削減(第十五条―第十九条)

第四章 評価及び表彰(第二十条)

第五章 雑則(第二十一条―第二十六条)

付則

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、建築物の低炭素化の促進に関し必要な事項を定め、建築物に起因する地球温暖化を防止し、及びヒートアイランド現象を緩和することにより、環境への負荷の低減を図り、もって区民が安全で安心できる快適な生活を営む上で必要な環境を保全することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 建築物の低炭素化 事業活動その他の活動に伴って建築物から発生する二酸化炭素の排出を抑制することをいう。

 地球温暖化 事業活動その他の人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表、大気及び海水の温度が追加的に上昇する現象をいう。

 ヒートアイランド現象 エネルギーの使用に伴う人工排熱の増加、地表面を被覆するものの変化等により、地域的に地表及び大気の温度が高くなる現象をいう。

 建築物 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。

 特定建築物 延べ面積(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第二条第一項第四号に規定する延べ面積をいう。以下同じ。)が二千平方メートル以上の建築物をいう。ただし、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成二十七年法律第五十三号)第十八条各号のいずれかに該当する建築物を除く。

 特定協力建築物 延べ面積が三百平方メートル以上二千平方メートル未満の建築物をいう。

 事業所 都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成十二年東京都条例第二百十五号。以下「環境確保条例」という。)第五条の七第六号に規定する事業所をいう。

 低炭素化促進事業所 延べ面積が一万平方メートル以上の事業所、環境確保条例第五条の七第八号に掲げる指定地球温暖化対策事業所並びに環境確保条例第八条の二十三第一項及び第二項の規定により提出された地球温暖化対策報告書に係る事業所等をいう。

 低炭素化協力事業所 延べ面積が三百平方メートル以上一万平方メートル未満の事業所(前号に掲げる低炭素化促進事業所を除く。)をいう。

(区の責務)

第三条 区は、この条例の目的を達成するため、建築物に起因する地球温暖化の防止及びヒートアイランド現象の緩和を図るための施策を講じなければならない。

2 区は、公共の用に供する建築物の建設その他建築物を使用し、又は利用した事業活動に伴う二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する取組を率先して実施しなければならない。

(事業者の責務)

第四条 事業者は、建築物に起因する地球温暖化の防止及びヒートアイランド現象の緩和のため、建築物を使用し、又は利用した事業活動に伴う二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する取組を自主的かつ積極的に実施しなければならない。

2 事業者は、この条例の目的を達成するため、区が実施する建築物に起因する地球温暖化の防止及びヒートアイランド現象の緩和を図る施策に協力しなければならない。

(区民等の役割)

第五条 区民等(区民その他の区内に存する建築物を使用し、又は利用する者をいう。)は、建築物に起因する地球温暖化の防止及びヒートアイランド現象の緩和について理解を深め、建築物を使用し、又は利用する場合には、二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する取組を自主的かつ積極的に実施するよう努めなければならない。

第二章 建築物の新築等に係る環境配慮の措置

(建築主の責務)

第六条 建築物の新築、増築又は改築(以下「新築等」という。)をしようとする建築主(建築基準法第二条第十六号に規定する建築主をいう。以下同じ。)は、当該建築物に係るエネルギーの使用の合理化並びに建築物に起因する地球温暖化の防止及びヒートアイランド現象の緩和について必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(環境配慮の目標基準)

第七条 区長は、環境への負荷の低減を図るため、建築物の省エネルギー性能に係る基準及び建築物からの人工排熱に係る基準(以下この条においてこれらを「環境配慮の目標基準」という。)を定めるものとする。

2 環境配慮の目標基準は、科学的知見、技術水準その他の事情を勘案して定めるものとし、必要に応じて改定するものとする。

3 区長は、環境配慮の目標基準を定め、又は改定したときは、その内容を公表するものとする。

4 特定建築物(住宅の用途に供する部分以外の部分の延べ面積が二千平方メートル未満の建築物を除く。)の新築等をしようとする建築主は、当該特定建築物について、環境配慮の目標基準を満たす特定建築物としなければならない。

(建築物の省エネルギー性能の優秀水準)

第八条 区長は、環境への負荷の低減を図るため、建築物の省エネルギー性能の優秀水準(前条第一項に規定する建築物の省エネルギー性能に係る基準より高い省エネルギー性能を定めた基準をいう。以下この条において同じ。)を定めるものとする。

2 建築物の省エネルギー性能の優秀水準は、科学的知見、技術水準その他の事情を勘案して定めるものとし、必要に応じて改定するものとする。

3 区長は、建築物の省エネルギー性能の優秀水準を定め、又は改定したときは、その内容を公表するものとする。

4 特定建築物の新築等をしようとする建築主(以下「特定建築主」という。)又は特定協力建築物の新築等をしようとする建築主(以下「特定協力建築主」という。)は、新築等をしようとする特定建築物又は特定協力建築物の省エネルギー性能が、建築物の省エネルギー性能の優秀水準に達するよう努めるものとする。

(事前協議)

第九条 特定建築主は、特定建築物の新築等をしようとする場合には、あらかじめ、区規則で定めるところにより、区長に協議しなければならない。協議に係る内容を変更しようとする場合も、また同様とする。

(低炭素化計画書の届出)

第十条 特定建築主は、前条の規定による協議の終了後、区規則で定めるところにより、建築物の新築等に係る環境配慮の措置等の検討状況を記載した計画書(以下「低炭素化計画書」という。)を作成し、区長に届け出なければならない。届出に係る内容を変更しようとする場合も、また同様とする。

2 特定協力建築主は、区規則で定めるところにより、前項の低炭素化計画書を作成し、区長に届け出るよう努めるものとする。

3 前項の規定による届出を行った特定協力建築主は、届出に係る内容を変更しようとする場合は、区規則で定めるところにより、区長に届け出なければならない。

(工事完了の届出)

第十一条 特定建築主及び前条第二項の規定による届出を行った特定協力建築主(以下「特定建築主等」という。)は、同条第一項又は第二項の規定による届出に係る建築物の工事が完了したときは、区規則で定めるところにより、区長に届け出なければならない。

(環境性能の表示等)

第十二条 特定建築主は、特定建築物の工事中及び工事の完了後は、区規則で定めるところにより、当該特定建築物の環境性能を表示しなければならない。

2 第十条第二項の規定による届出を行った特定協力建築主は、当該届出に係る特定協力建築物の工事中及び工事の完了後は、区規則で定めるところにより、当該特定協力建築物の環境性能を表示するよう努めるものとする。

3 特定建築主等は、前二項の規定による表示をしたときは、区規則で定めるところにより、その旨を区長に届け出なければならない。

(低炭素化計画書等の公開)

第十三条 区長は、第十条第十一条又は前条第三項の規定による届出があったときは、区規則で定めるところにより、その内容を公開するものとする。

(特定建築主及び特定協力建築主への支援)

第十四条 区長は、特定建築主及び特定協力建築主に対し、特定建築物及び特定協力建築物の省エネルギー性能の向上に関し必要な技術的支援を行うことができる。

第三章 事業所の二酸化炭素排出量等の削減

(地球温暖化対策報告書の提出)

第十五条 低炭素化促進事業所の所有者(当該所有者以外にも当該低炭素化促進事業所の事業活動に伴う二酸化炭素の排出について責任を有する者として区規則で定める者が、区規則で定めるところにより区長に届け出た場合においては、当該届出者。以下「低炭素化促進事業者」という。)は、区規則で定めるところにより、二酸化炭素排出量、エネルギー使用量、地球温暖化対策の取組状況等を記載した報告書(以下「地球温暖化対策報告書」という。)を作成し、区長に提出しなければならない。

2 低炭素化協力事業所の所有者(当該所有者以外にも当該低炭素化協力事業所の事業活動に伴う二酸化炭素の排出について責任を有する者として区規則で定める者が、区規則で定めるところにより区長に届け出た場合においては、当該届出者。以下「低炭素化協力事業者」という。)は、区規則で定めるところにより、地球温暖化対策報告書を作成し、区長に提出するよう努めるものとする。

(テナント等事業者との協力推進体制等)

第十六条 低炭素化促進事業者(環境確保条例第五条の八の二第二項に規定する指定地球温暖化対策事業者、環境確保条例第五条の十一第一項に規定する特定地球温暖化対策事業者及び環境確保条例第八条の二十三第三項に規定する地球温暖化対策事業者等を除く。以下この条において同じ。)は、その低炭素化促進事業所の全部又は一部を賃借権その他の権原に基づき事務所、営業所等として使用して事業活動を行う事業者(以下「テナント等事業者」という。)と協力して地球温暖化の防止に関する対策を推進するための体制(以下「協力推進体制」という。)を整備しなければならない。

2 低炭素化協力事業者は、テナント等事業者と協力して協力推進体制を整備するよう努めるものとする。

3 テナント等事業者は、協力推進体制に参画するとともに、低炭素化促進事業者又は低炭素化協力事業者が区長に提出する地球温暖化対策報告書の作成に協力するよう努めるものとする。

4 区長は、低炭素化促進事業者及び低炭素化協力事業者に対し、協力推進体制の整備に係る指導及び助言を行うことができる。

5 区長は、テナント等事業者に対し、低炭素化促進事業者又は低炭素化協力事業者が整備する協力推進体制への参画及び地球温暖化対策報告書の作成に係る指導及び助言を行うことができる。

6 前二項の指導及び助言は、口頭又は書面により行うものとする。

7 区長は、第四項及び第五項の指導及び助言に係る事務(口頭で行う場合に限る。)をあらかじめ指定する者に委託して行わせることができる。

(事業所の二酸化炭素排出量等の削減に関する優秀水準)

第十七条 区長は、環境への負荷の低減を図るため、事業所の二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する優秀水準を定めるものとする。

2 前項の事業所の二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する優秀水準は、科学的知見、技術水準その他の事情を勘案して定めるものとし、必要に応じて改定するものとする。

3 区長は、第一項の事業所の二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する優秀水準を定め、又は改定したときは、その内容を公表するものとする。

4 低炭素化促進事業者又は低炭素化協力事業者は、低炭素化促進事業所又は低炭素化協力事業所の二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量が、第一項の事業所の二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関する優秀水準に達するよう努めるものとする。

(地球温暖化対策報告書の公開)

第十八条 第十五条の規定により区長に地球温暖化対策報告書を提出した低炭素化促進事業者及び低炭素化協力事業者(以下「低炭素化促進事業者等」という。)は、区規則で定めるところにより、遅滞なくその内容を公開しなければならない。

2 区長は、地球温暖化対策報告書の提出があったときは、区規則で定めるところにより、その内容を公開するものとする。

(低炭素化促進事業者及び低炭素化協力事業者への支援)

第十九条 区長は、低炭素化促進事業者及び低炭素化協力事業者に対し、二酸化炭素排出量及びエネルギー使用量の削減に関し必要な技術的支援を行うことができる。

第四章 評価及び表彰

(評価及び表彰)

第二十条 区長は、届出のあった低炭素化計画書又は提出のあった地球温暖化対策報告書について、区規則で定めるところにより評価し、その結果を当該低炭素化計画書を届け出た特定建築主等又は当該地球温暖化対策報告書を提出した低炭素化促進事業者等に通知するものとする。

2 区長は、前項の規定による評価を行った場合において、届出のあった低炭素化計画書又は提出のあった地球温暖化対策報告書の内容が特に優れていると認めるときは、当該低炭素化計画書を届け出た特定建築主等又は当該地球温暖化対策報告書を提出した低炭素化促進事業者等を表彰することができる。

3 区長は、第一項の規定による評価及び前項の規定による表彰について、区規則で定めるところにより公表するものとする。

第五章 雑則

(指導及び助言)

第二十一条 区長は、第七条第四項第九条第十条第一項及び第三項第十一条第十二条第一項及び第三項第十五条第一項並びに第十八条第一項に規定する措置の的確な実施を確保するため必要があると認めるときは、指導及び助言を行うことができる。

2 前項の指導及び助言は、口頭又は書面により行うものとする。

3 区長は、第一項の指導及び助言に係る事務(口頭で行う場合に限る。)をあらかじめ指定する者に委託して行わせることができる。

(勧告)

第二十二条 区長は、前条第一項の指導を受けた者が正当な理由なくその指導に従わないときは、必要な措置を講ずるよう勧告することができる。

2 前項の規定による勧告は、書面により行うものとする。

(実地調査等)

第二十三条 区長は、この条例の施行に必要な限度において、区の職員に、建築物、事業所その他の必要な場所において、その関係人の同意を得て、エネルギー関係書類、機械、設備その他の物件を調査させ、又はその関係人に必要な資料の提出を求め、若しくは質問させることができる。

2 前項の規定により実地調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による実地調査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(報告の徴収等)

第二十四条 区長は、この条例の施行に必要な限度において、特定建築主及び特定協力建築主並びに低炭素化促進事業者及び低炭素化協力事業者に対し、必要な事項の報告又は資料の提出を求めることができる。

(違反者の公表)

第二十五条 区長は、第二十二条第一項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なくその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。

2 区長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表の対象となる者に対し、あらかじめ、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えなければならない。

(委任)

第二十六条 この条例の施行について必要な事項は、区規則で定める。

1 この条例は、令和三年四月一日から施行する。

2 この条例中第二章の規定は、この条例の施行の日前において次の各号のいずれかに該当する建築物については適用しない。

 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第十二条第三項の規定に基づき所管行政庁(同法第十五条第二項の規定により読み替えて適用する場合にあっては、登録建築物エネルギー消費性能判定機関)が交付した建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行規則(平成二十八年国土交通省令第五号)第四条第一項第一号に定める適合判定通知書に係る建築物

 環境確保条例第二十一条又は第二十一条の二の規定により東京都知事に提出され、受理された建築物環境計画書に係る建築物

 東京都の都市開発諸制度を適用する開発における環境性能評価を受けている建築物その他の他の法令等の規定に基づき、環境性能に係る評価を受けているものとして区規則で定める建築物

港区民の生活環境を守る建築物の低炭素化の促進に関する条例

令和2年3月10日 条例第9号

(令和3年4月1日施行)

体系情報
第7類 環境リサイクル/第1章
沿革情報
令和2年3月10日 条例第9号