○港区監査基準

令和2年3月25日

31港監第1016号

第1章 総則

第1節 一般基準

(目的)

第1条 この基準は、地方自治法(以下「法」という。)及び地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下「財政健全化法」という。)の規定に基づいて監査委員が行う監査、検査及び審査(以下「監査等」という。)の実施並びに報告の聴取に関し、必要な事項を定めるとともに、議会及び区長若しくは関係する行政委員会等(以下「区長等」という。)並びに外部監査人との関係を明確にすることを目的とする。

(基本方針)

第2条 監査委員は、監査等を実施するに当たっては、事務の執行が、法第2条第14項及び第15項の規定の趣旨にのっとって、法令に適合し、正確で、経済的、効率的かつ効果的に実施されているかどうかに、特に意を用いなければならない。

(倫理規範)

第3条 監査委員は、高潔な人格を維持し、誠実に、かつ、本基準にのっとってその職務を遂行する。

(監査委員の使命)

第4条 監査委員は、法令により定められた権限に基づいて、事務事業の執行について監査等を実施し、自ら入手した証拠に基づき意見等を形成するとともに、その結果に関する報告を決定し、これを議会及び区長等に提出し、公表するなどにより、民主的かつ効率的な行政の執行確保に資し、もって住民の福祉の増進と地方自治の本旨の実現に寄与する。

(監査委員の責務)

第5条 監査委員は、区政運営に関し、広い知識と深い理解を持ち、その職務を遂行するに当たっては、常に独立的かつ客観的な立場で公正不偏の態度を保持し、正当な注意をもって監査等を実施しなければならない。

2 監査委員は、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。

3 監査委員は、監査計画に基づいて、監査委員の事務を補助する職員(以下「補助職員」という。)を指導監督しなければならない。

4 監査委員は、議会又は区長にあらかじめ意見を聴かれたり、外部監査人に協議を求められた場合、信義誠実な態度で応じなければならない。

(専門性)

第6条 監査委員は、住民の視点に立ちつつ、財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有することが求められ、その職務を遂行するため、自らの専門能力の向上と知識の蓄積を図り、その専門性を維持確保するため研鑽に努める。

2 監査委員は、補助職員に対し、監査委員の職務が本基準にのっとって遂行されるよう、財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関して、自らの専門能力の向上と知識の蓄積を図るよう研鑽に努めさせる。

(補助職員の心得)

第7条 補助職員は、監査委員の指揮監督のもと、職務の遂行に当たっては、特に次の各号に掲げる事項に留意しなければならない。

(1) 職責を十分認識し、常に研修に心がけ、法令、条例、規則等(以下「法令等」という。)に精通するとともに、区政の現状に関心を持ち、監査等の参考となるような資料の収集に努めること。

(2) 監査等の実施に当たっては、監査委員の監査方針に従い、監査対象についてあらかじめ十分研究すること。

(3) 監査等の実施に当たっては、常に公平謙虚な心構えを持ち、能率的に実施すること。

(4) 職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。

(5) 監査等の進捗状況は、適宜、上司に報告し、重要事項その他疑義のある事項については、その都度指示を受けること。

(6) 監査等の終了後は、できるだけ速やかに書面等により監査委員に復命すること。

第2節 実施基準

(実施の基本方針)

第8条 監査等の実施に当たっては、事務の執行が予算及び議決並びに法令等に基づいて行われているかに留意し、積極的かつ指導的に実施しなければならない。

(計画的な監査等の実施)

第9条 監査等を効率的かつ効果的に実施するため、監査基本計画を作成するとともに実施計画を作成し、これに基づいて監査等を適時に実施しなければならない。

(内部統制に依拠した監査等)

第10条 監査等(内部統制評価報告書審査を除く。本条及び第36条第5号において同じ。)は、監査等の対象のリスク(組織目的の達成を阻害する要因をいう。以下同じ。)を識別し、リスクの内容及びリスクが生じる可能性とその影響を検討した上で、重点化を図り、効率的かつ効果的に実施する。

2 前項のリスクの内容及びリスクが生じる可能性とその影響の検討に当たっては、内部統制の整備状況及び運用状況について情報を集め、判断する。

3 監査委員は、監査等の種類に応じ、内部統制に依拠する程度を勘案し、適切に監査等を実施する。

(監査等の調整)

第11条 監査等の計画の策定及び実施に当たっては、個々の監査等に有機的な関連を持たせ、総合して成果が上がるよう調整運用しなければならない。

2 監査委員は外部監査人に対し、相互の監査の実施に支障をきたさないよう配慮しなければならない。

(監査等の方法)

第12条 監査等の方法は、監査等の種別、対象、目的並びに内部けん制組織及び内部監査の信頼性の程度を勘案して、試査又は精査による。

2 試査は、監査等の対象となっている事項について、その一部を抽出して調査し、その結果によって、全体の正否又は適否を推定する。

3 精査は、監査等の対象となっている事項について、違法、不当な事項を発見し、又は問題点等を明らかにするため、全部にわたり精密に調査する。

第3節 報告基準

(報告、意見の提出)

第13条 監査委員は、監査等を終了したときは、公正不偏な態度をもって報告、意見(以下「報告等」という。)を決定し、速やかに提出及び公表の手続をとらなければならない。

(監査結果に係る勧告)

第14条 監査委員は、前条の監査の結果に関する報告のうち、特に措置を講ずる必要があると認める事項について、勧告することができる。この場合において、監査委員は、勧告の内容を速やかに公表しなければならない。

(報告等の提出以前の周知の禁止)

第15条 監査等の結果は、報告等の提出以前に、関係者以外の者に知らせてはならない。

第2章 監査等の実施

第1節 監査等の種別

(監査)

第16条 監査の種別は、次の各号に掲げるとおりとする。

(1) 定期監査(法第199条第4項の規定による監査)

毎会計年度少なくとも1回以上期日を定めて、次の事項について行う。

 区の財務に関する事務の執行が、適正かつ効率的に行われているかどうかを主眼として実施する。

 区の経営に係る事業の管理が、合理的かつ効率的に行われているかどうかを主眼として実施する。

 必要に応じ、区の事務事業の執行に係る工事について、当該工事の設計、施工等が適正に行われているかどうかを主眼として実施する。

(2) 随時監査(法第199条第5項の規定による監査)

必要があると認めるとき、定期監査に準じて実施する。

(3) 行政監査(法第199条第2項の規定による監査)

必要があると認めるとき、一般行政事務の執行が、合理的かつ効率的に行われているか、法令等の定めるところに従って適正に行われているかどうかを主眼として適時に実施する。

(4) 財政援助団体等に関する監査(法第199条第7項の規定による監査)

財政的援助を与えている団体、出資・支払保証団体、信託の受託者及び公の施設の管理を行わせている団体に対し、必要があると認めるとき、又は区長の要求に基づき、当該財政援助等に係る出納その他の事務の執行が適正かつ効率的に行われているかどうかを主眼として実施する。

(5) 公金の収納又は支払事務に関する監査(法第235条の2第2項の規定による監査)

指定金融機関等に対し、必要があると認めるとき、又は区長の要求に基づき実施する。

(6) 住民の直接請求に基づく監査(法第75条の規定による監査)

請求に係る事務の執行について実施する。

(7) 議会の要求に基づく監査(法第98条第2項の規定による監査)

要求に係る事務について実施する。

(8) 区長の要求に基づく監査(法第199条第6項の規定による監査)

要求に係る事務の執行について実施する。

(9) 住民監査請求に基づく監査(法第242条の規定による監査)

請求の内容について実施する。

(10) 区長の要求に基づく職員の賠償責任に関する監査(法第243条の2の2第3項の規定による監査)

要求に係る事実の有無等について実施する。

(検査)

第17条 検査の種別は、例月出納検査(法第235条の2第1項の規定による検査)とし、会計管理者の権限に属する現金の出納について、毎月の計数を確認するとともに、事務処理が適法かつ正確に行われているかどうかを主眼として実施する。

(審査)

第18条 審査の種別は、次の各号に掲げるとおりとする。

(1) 決算審査(法第233条第2項の規定による審査)

決算計数の正確性を検証するとともに、予算の執行が、適正かつ効率的に行われているかどうか、また、財政運営は健全かどうかなどを主眼として実施する。

(2) 基金の運営状況審査(法第241条第5項の規定による審査)

基金の運用状況を示す書類の計数の正確性を検証するとともに、基金の運用が、設置目的に沿って適正かつ効率的に行われているかどうかを主眼として実施する。

(3) 健全化判断比率の審査(財政健全化法第3条の規定による審査)

実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率及びその算定基礎となる事項を記載した書類が適正に作成されているかどうかを主眼として実施する。

(4) 内部統制評価報告書の審査(法第150条第5項の規定による審査)

区長が作成した内部統制評価報告書について、区長による評価が適切に実施され、内部統制の不備について重大な不備に当たるかどうかの判断が適切に行われているかどうかを主眼として実施する。

(報告の聴取)

第19条 監査委員は、地方自治法施行令第168条の4第3項の規定により、指定金融機関に対する検査の結果について、会計管理者に対して報告を求める。

第2節 監査手続

(監査計画の作成)

第20条 監査基本計画は、次の各号に掲げる事項について定める。

(1) 年間における実施予定の監査等の種別

(2) 監査等の種別実施予定時期

(3) その他監査等の実施に関し必要と認める事項

2 実施計画は、監査等の種別毎に次の各号に掲げる事項について定める。

(1) 監査等の実施方針

(2) 監査対象選定基準

(3) 監査等の項目

(4) 監査等の日程及び対象

(5) 監査等の着眼点

(6) その他監査等の実施上必要と認める事項

(監査調書等の作成及び保存)

第21条 監査委員は、監査計画、監査等の内容その他の監査委員が必要と認める事項を監査調書等として作成し、保存する。

(事前通知)

第22条 監査等を実施するに当たっては、監査の対象となる機関の長に対し、監査等の種別、期日、場所等を指定し、その期日の5日前までに通知する。ただし、監査委員が緊急に監査又は検査を行う必要があると認めるときは、この限りでない。

(個別外部監査契約に基づく区長への通知等)

第23条 監査委員は、事務の監査請求に係る個別外部監査の請求があったときは、請求の要旨を公表するとともに、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることについての意見を付けて、その旨を区長に通知する。

2 監査委員は、議会から個別外部監査の請求があったときは、その旨を区長に通知する。

3 監査委員は、長からの個別外部監査の要求及び財政的援助を与えているもの等に係る個別外部監査の要求があったときは、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることについての意見を区長に通知する。

4 監査委員は、住民監査請求に係る個別外部監査の請求があったときは、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることが相当であると認めるときは、個別外部監査契約に基づく監査によることを決定し、請求があった日から20日以内に区長に通知する。この場合、監査委員は、当該通知をした旨を請求人に通知する。

(資料請求等)

第24条 監査等を実施するに当たっては、あらかじめ項目及び様式を定めて監査等に必要な資料を提出させ、必要に応じて事務事業の概況について説明を求める。

(事前研究)

第25条 監査等を実施するに当たっては、次の各号に定める事項について事前研究に努める。

(1) 対象となる事務事業についてあらかじめ関連法規等の調査研究を行い、基礎知識を習得する。

(2) 前条の規定に基づき提出された資料について検討し、その問題点を把握する。

(3) 前回までの監査等における指摘事項等を把握する。

(監査等の着眼点)

第26条 第20条第2項の規定に基づく、実施計画において定める監査等の着眼点は、別項に定める「監査等の着眼点」のうちから適宜選択する。ただし、別項にないものについては、その都度定める。

なお、行政監査に当たっては、別項第2の着眼点を参考に、監査の対象に応じた着眼点を、その都度定める。

(監査技術の選択適用)

第27条 監査等は、書類、帳簿、証書類等に基づき、次の監査技術を必要に応じ適宜に選択し実施する。

ア 照合 証拠突合、帳簿突合及び計算突合等のように関係諸記録を相互に突合せ、その記録又は計算の正否を確かめること。

イ 実査 事実の存否について、実地に現物検証、現場検証等により直接検証すること。

ウ 立会 物品等の在庫高調査又は実地棚卸し等を行う際に、現場に立会い、その実施状況を視察して正否を確かめること。

エ 確認 事実の存否を、証拠及び第三者の証言等をもって確かめること。

オ 質問 事実の存否又は問題点について、監査対象部局の職員などに質問して、回答又は説明を求めること。

カ 分析 事実の性質、内容を究明し、これを構成要素別、時間別、比率別、問題別等に分析して異常の有無を確かめること。

キ 比較 年度別、時間別、関係要素別等による複数の数値を対照させて観察し、その異同を通じて問題点の有無を確かめること。

ク 通査 帳簿等関係諸記録を一通り調査して、異常事項や例外事項を発見し、問題点を明らかにすること。

ケ 調整 源泉を等しくし、相互に関連のある計数が別々に整理されている場合、それら二組の計数の過不足を追及し両者が事実上一致するかどうかを確かめること。

コ 総合 諸種の事実を総合して、総括的な観点から事実を判断して評定すること。

(監査等の方法の適用)

第28条 第16条第1号から第5号まで、第17条及び第18条に掲げる監査等における監査方法は、原則として試査による。ただし、試査によって異常を発見した場合は、当該事項について精査をする。

(監査等の講評)

第29条 監査対象部局への講評は、原則として監査等の結果に関する報告の決定の前に行い、これに対する弁明又は意見を聴取する。

なお、是正改善等が必要と認められる事項については、後日報告の提出を求める。

第3章 監査等の結果

(報告の提出)

第30条 監査又は検査を終了したときは、監査又は検査の結果に関する報告を法第199条第9項の規定により、議会及び区長等に提出しなければならない。

2 事務の監査の請求に係る個別外部監査について、外部監査人から監査の結果報告があったときは、請求人の代表者に送付しなければならない。

3 住民監査請求に係る個別外部監査について、外部監査人から監査の結果報告があったときは、請求に理由があるかどうかを決定のうえ請求人に通知しなければならない。

(意見の提出)

第31条 監査の結果に基づいて必要があると認めるときは、前条第1項に規定する報告に添えて、法第199条第10項の規定による意見を提出する。

2 外部監査人の監査結果について必要があると認める場合は、議会及び区長等に対して意見を提出することができる。

(審査意見の提出)

第32条 決算審査及び基金の運用状況審査を終了したときは、審査意見を区長に提出する。

2 健全化判断比率の審査を終了したときは、審査意見を区長に提出する。

(勧告)

第33条 住民監査請求の対象となった行為について、法第242条第3項の規定に基づき当該行為を停止すべきことを勧告したときは、請求人に通知し、かつ公表しなければならない。

2 住民監査請求に基づく監査の結果、請求に理由があると認めるときは、議会又は区長等に期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、これを請求人に通知し、かつ公表しなければならない。

(報告等の決定)

第34条 監査等の結果に関する報告等の決定(第16条第5号及び第17条に定めるものを除く。)、外部監査人の監査結果に関する意見及び内部統制評価報告書審査に係る意見並びに住民監査請求に係る個別外部監査結果について請求に理由があるかどうかの決定、勧告は、法第199条第12項等の規定により合議による。

(報告等の公表)

第35条 報告等のうち、第16条第1号から第4号まで、第6号から第9号に定める監査、並びに外部監査人の結果報告については公表しなければならない。公表は、港区公報に登載するとともに、港区告示式に定める方式により行う。

(報告書等の記載事項)

第36条 監査報告書、検査報告書及び審査意見書には、おおむね次の各号に掲げる事項を記載する。

(1) 報告等の日付

(2) 監査等を実施した監査委員名

(3) 監査等の種別

(4) 監査等の概要

 監査等の実施機関

 監査等の対象とした部課又は事業所等の名称(財政援助団体等にあっては団体名)

 監査等の項目及び範囲

 監査等の主な観点

(5) 監査等の結果

 指摘事項(分類整理して記載するとともに必要に応じて助言、注意等を付記すること。)

 事務事業の執行等についての意見

(監査等の結果報告後の処置)

第37条 第16条第1号から第4号まで、若しくは第8号に係る監査等の結果及び勧告、並びに外部監査について、区長等から措置を講じた旨通知があったときは、これを公表しなければならない。

2 第16条第9項の住民監査請求に係る勧告に基づき、議会又は区長等から必要な措置を講じた旨通知があったときは、これを請求人に通知し、かつ公表しなければならない。

3 公表の方法については、第35条後段の規定を準用する。

この基準は、令和2年4月1日から施行する。

港区監査基準

令和2年3月25日 港監第1016号

(令和2年4月1日施行)

体系情報
要綱集/第10類
沿革情報
令和2年3月25日 港監第1016号