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更新日:2022年4月6日

麻布地区の地域情報紙(最新号)

 アートな麻布に魅せられて(27) 令和に甦った江戸宝暦年間の店蔵

仙台坂上から四の橋に向かう一本道の途中に、モダンなコンクリートの建物が昨夏、完成した。木の格子戸に見覚えのある方も多いのでは? そう、以前の古民家を建て替え、1階部分に江戸時代から伝わる店蔵を保存再生したのだ。


自然光とライティングの効果でほんわりとした雰囲気が心地よい令和の店蔵。

「商人の町の生き証人」としての店蔵


山岡 嘉彌(やまおか よしや)さん
一級建築士事務所 山岡嘉彌デザイン事務所代表


建物の屋上から見下ろしたところ。間口が狭く奥行の長い敷地割がわかる。これが商人の町の名残なのだ。

私たちがこの場所を訪れたのは実は2度目。2014年1月、建築家の山岡嘉彌さんにご自宅の古民家への思いをインタビューした(ザ・AZABU27号「麻布びと」)。建物はかつて店舗や座敷にも利用されていた店蔵と、奥に続く昭和初期からの母屋。その店蔵は旧江戸御府内(江戸市中)に江戸時代から唯一現存するといわれる貴重なものだ。

山岡さんのご先祖様は宝暦(ほうれき)年間(1751~1764)に近江(現在の滋賀県)から出てきた商人で、仙台藩の出入り商人として薬や米、炭、薪などの商いをしていたという。「私の使命はこの家を記録し記憶を語り継ぐこと」と、当時教鞭をとっていた大学の学生らとともに外観から部材の一つひとつを実測し図面を書き起こした。

残念ながらその後2018年の台風などで老朽化が一気に進み、いよいよ解体することに。しかし店蔵だけは「この通りは江戸の当時から昭和60年代頃まで、商人の店が建ち並ぶ街でした。最後の一軒であるこの建物は麻布の歴史を見守り続けている存在です。どうしてもここに遺したかった」と山岡さんは熱く語る。

匠の技の宝庫だった

15カ月の設計期間を経て、2020年5月から解体工事がスタートした。

「それはもう、驚きと発見の連続でした」という話のわけは、例えば大壁の土を丁寧に削り落とすと、太い竹を縄で接合する“竹小舞(たけこまい)”の下地が出現。柱や梁は、釘を使わず材木に凹凸をつけた“仕口(しぐち)”と“継手(つぎて)”でがっちりと組まれている。しかも材自体、火災による炭化痕や湿気による腐朽、虫害の痕も見られまさに満身創痍。それらを“金輪継ぎ(かなわつぎ)”という技術で新しい材と継ぎ合わせ、生き長らえてきた。「災害で損傷を受ける度に丁寧に修復していったのです。職人たちの確かな技の結集に目を奪われました。」

また文化財の専門家の調査によると、材の表面の加工痕からそのほとんどが宝暦年間のものであることもわかった。

「店蔵が建ったのは安政年間(1855~1860)と考えられてきました。ところが、この分析結果でさらに約100年さかのぼった宝暦年間、つまり先祖が江戸に出てこの地に居を構えたその時機の建物であることが特定できたのです。意外なことでした」

保存再生した店蔵の中には竹小舞壁の再現や、仕口と継手が当時のままみられ、また前回の取材でも目をひいた黒光りする“箱階段”も健在だった。それらを見学し、しばし店蔵の来し方に思いを馳せた。

今ここにあることは奇跡に近いことなのだ。17代目当主にして建築家の山岡さんが、未来へ向かって命を吹き込んだこの店蔵は、麻布の新しいアートだと一同、確信した。


一つひとつの材を解体した後に、殺菌・殺虫処理をするなど手間がかかっている。

 


竹小舞下地の繊細な美しさ。下部には新しい材を継いで「令和参年修補」と刻印。


新旧の材を金輪継ぎで組んだ断面。柱の根本に使われ、前後左右に力がかかっても、変形に追随し柔軟に元に戻る。

鶯啼居(おうていきょ)

この建物には、松尾芭蕉が「うぐいすをたづねたづねて阿左布(注・麻布)まで」と詠んだと伝えられる地であることに因み、また旧邸の庭にもよく鶯が来ていた情景の懐かしさも込めて山岡さんが“鶯啼居”と名付けた。

上階は外国人ファミリーの入居を想定した共同住宅。店蔵を保存再生した1階スペースは、今後、入居者の会合や、地域住人、まちあるきツアーの方たちにも見てもらえるような利用のしかたを考えたいとのこと。


撮影・坂口裕康


旧店蔵。2014年1月撮影。

 


(取材/高柳由紀子、田中亜紀、田中康寛 文/田中亜紀)

 

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 大使を訪ねて 麻布の”世界”から

CYPRUS キプロス共和国

2020年2月、南麻布の駐日欧州連合代表部が入居するヨーロッパハウス内に、キプロス大使館が開設されました。

地中海東に位置する、四国の半分ほどの島国キプロス。その映えある初代大使として、ハリス・モリチス氏が着任。大使の意気込みや今後の展望を伺いました。


ハリス・モリチス大使(Charis Moritsis)
取材協力/キプロス共和国

キプロス共和国

  • 面積:9,251平方キロメートル(四国の約半分と同じ広さ)
  • 人口:約100万人(キプロス共和国統計局)
  • 首都:ニコシア市
  • 言語:ギリシャ語、(ほか広く英語)
  • 元首:大統領制、元首兼行政の長
  • 議会:一院制80議席(現在ギリシャ系56議席のみで構成)

参考:外務省ホームページ(外部サイトへリンク)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/cyprus/index.html

自ら駐在を希望して、日本へ

モリチス大使(以下大使)は外交官としてこれまでにセルビア、フィンランド、エジプト、ベルギー、再びエジプトでの赴任を経験してきた。日本への赴任は、自ら手を挙げた。

「日本は世界の中でも技術大国であり、地球上での役割も非常に重要な国です。私自身も学ぶことが多いと思い、日本行きを希望しました」。

数名の立候補がある中、日本への赴任が決定。キプロスで本や映画、また日本人の外交官に会い予習をしてきた。来日してから学び始めている部分も多いという。

日本市場に拡大を狙うキプロスの食品

初代大使として重要なミッションは、日本との貿易の拡大だ。キプロスから日本への輸出は「食品が主流です。最も多いのが魚。貝ではなく冷凍した魚を多く輸出しています。他にチーズ、ワイン、塩など」。

今後輸出量を増やして、日本に定着させたいと働きかけている。さらにキプロスワイン、オリーブオイル、チーズなどが候補にあがっている。中でもキプロス特産のチーズ「ハルミ」について、大使が熱く語って下さった。

「タイム(シソ科のハーブ)を餌にして育った羊や山羊の生乳から作ったチーズで、キプロスの家庭では毎日登場する、とてもポピュラーなフレッシュチーズです。」特徴は焼いても溶けないこと。生のままでも、グリルしても美味しい。

キプロスのレストランでは、どこでもハルミが登場するほど。今回の取材で大使が用意して下さったハルミチーズをご馳走になった。癖がなくて、食べやすい味は、日本人の口に合う美味しさだった。貿易で日本からの輸入品は、自動車、船、そして日本の技術が主要である。

身体を鍛えるのが趣味、健康おたくの大使

大使は赴任が決まって、初めて日本へいらした。日本人の印象を伺ってみると「とても謙虚、穏やか、礼儀正しい、この3点」と、即答。

そして日本に住むからには、日本人の日常の暮らしに身を置き、一緒に学ぶ、が大使の信条。その証として、来日後始めたのが「ヨガ」。なんと!仕事前の朝7時からの教室に、週3回通うほどの熱の入れよう。「おかげで身体が柔らかくなりましたよ」とニッコリ。スポーツジムで身体を鍛えることも忘れない。

さらに「私はすごく歩きます」と断言なさるとおり、週末の土日は必ず散策に出かけている。広尾~目黒~代官山エリアがお気に入りで、20km歩くのは当たり前だそう(!)リュックに本を詰め、ウォーキングがてらお気に入りのカフェを見つけて、コーヒーと読書を楽しむのが至福のひと時という。

「いつも歩いているので、広尾~代官山界隈はかなり詳しいですよ」と大使。大使館の近所、有栖川宮記念公園の散策や、坂の上り下りを楽しみながら六本木へ。公邸~大使館も時間があれば30分かけて徒歩通勤するほど。

お話を伺っていると、とにかく身体を動かすことが好き、というのがよくわかる。なるほど、スリムな体型をキープされているわけだ。今までに赴任された各国でも、くまなく歩いてきたそうだ。田舎も都市も様々な場所を歩くことで、隠れ家的な店をみつけるのが面白いという。


大使を始め、日本在住のキプロス人は100人前後。最近HPを立ち上げ、お互いの情報を共有していきたいという。キプロス在住の日本人も同様に約100人だそう。

アフロディーテの待つ島、魅力溢れるキプロス

私たちにとってまだまだなじみの薄い国、キプロス。政府観光局の冊子には~「古代ギリシャの愛の女神アフロティーテ(ヴィーナス)が唯一“我が家”と呼んだ島、それがキプロスです」~と謳っている。大使おすすめの観光スポットは?

「私の生まれ故郷である、西のパフォス(PAFOS)を是非訪れてほしいですね。海の美しさは世界一。キプロスのかつての首都であり、アフロディーテ伝説発祥の地でもあります。」

ローマ時代(紀元前3世紀)の貴族の館にはギリシャ神話の「モザイク画」。エジプト・プトレマイオス王朝の王族の墓跡である広大な地下墳墓「王族の墓」なども見どころで、ユネスコの世界遺産となっている。紀元前からの歴史遺産が数多く残る、魅力ある国ということが、よくわかる。

長い歴史に培われた工芸、民芸品も注目だ。大使の故郷パフォス地方の普段使いの民族衣装は、温かい風合いのフィティ織に細かい刺繡が施されている。また島東南部のレフカラ村で代々受け継がれている針編刺繍「レフカリティカ」は、ユネスコの無形文化遺産に登録されているほどだ。


ユネスコの無形文化遺産に登録されているレース手芸「レフカリティカ」の作品。


襟、袖、足元などに美しく刺繍された普段使いの民族衣装。

 

観光スポットと同時に、キプロスでの食事も気になる。ギリシャ、東地中海、南ヨーロッパなどの料理が楽しめるそうだ。

「チーズのハルミは是非グリルした料理で召し上がって下さい。串焼きのケバブもおすすめ。スイーツでは蜂蜜のシロップを潜らせたドーナツのルクマデスもキプロスの味ですよ。」

大使の好物はギリシャ料理のムサカ(茄子、じゃガ芋、ミートソースの重ね焼き)。母上の得意料理で、大使にとってまさにお袋の味だ。話を伺いながら、歴史、文化、国のすべてが混在の魅力で溢れていた。


キプロスのレストランに必ずある「焼きハルミ」。焼いても溶けないハルミチーズはそのままでも焼いても美味しい。


キプロスのソウルフード、大人から子どもまで大好きなスイーツ「ルクマデス」蜂蜜のシロップを潜らせた甘いドーナツ。

※上記2点 キプロス・インフォメーションサービス/Cyprus Information Service提供

 

キプロスの有り余る魅力に圧倒されっぱなしのインタビューでした。1970年生まれ、52歳の若き大使は身の動きが実にかろやかで、終始笑顔で、丁寧に対応して下さった。キプロスが行ってみたい国の上位にぐ~んと押し上げられたのは言うまでもなく、心地よい取材でした。


大使がもてなして下さったハルミチーズのスナックフード。美味しく頂いた。こちらは火を入れず、生のままで。

世界遺産に登録されているパフォス(Paphos)周辺の観光スポット


アフロディーテ(ヴィーナス)誕生伝説の海岸、ペトラ・トゥ・ロミウ(Petra tou Romiou)にある、「アフロディーテの岩」とよばれる名所。パフォスから東へ25kmに位置する。


紀元前3世紀のローマ時代の貴族の館に残されている、ギリシャ神話をモチーフにした「モザイク画」。


広大な地下墳墓「王族の墓」。

※キプロス政府観光庁/Republic of Cyprus, Deputy Ministry of Tourism提供

 


(取材・文/高柳由紀子)

 

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