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トップページ > 麻布地区総合支所 > 暮らしの情報 > 麻布地区の地域情報紙(最新号)

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更新日:2025年8月5日

ページID:12087

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麻布地区の地域情報紙(最新号)

アートな麻布に魅せられて35 全日本海員組合本部会館

ピカピカの超高層ビルが増え続ける六本木交差点近くで、築60年のオフィスビルが改修工事を終えた。大切な歴史を継承しながら、今後も末永く使用するための機能が付加され、一部の施設が地域にもひらかれた。

 


地下1階ロビー、照明器具や建具類は竣工時から大切に使われている

 

全日本海員組合と六本木の歴史

全日本海員組合は、海運業や水産業に従事する船員が、所属会社などを越えて産業全体でひとつに団結した、日本唯一の産業別単一労働組合である。大正10(1921)年の結成以来神戸に本部を置いたが、戦後、「国政により近い」東京への移転を決める。都内複数の候補地から六本木が選ばれた理由は、東京湾や霞ヶ関官庁へのアクセスの良さに加え、地価も比較的安かったからという。

本部会館は昭和37(1962)年に着工。当時の六本木は、2年後の東京オリンピック開催にむけて、六本木通り沿いの建物が解体されて道路が拡張され、道路の上下に高速道路と地下鉄日比谷線の建設が進む、大きな変貌期にあった。昭和39(1964)年竣工直後の写真を見ると、周囲はまだ低層の建物しか無く、モダンでスタイリッシュな6階建ての白いビルは、ひときわ大きく輝いている。ビルの屋上から海も見えたという。

 


六本木通り側から撮影した竣工直後の姿(全日本海員組合提供)

 

本部会館建物の高い評価

本部会館の設計者は、前川國男建築事務所から独立したばかりの大髙正人。後に建築のみならず都市計画の分野でも建築界を牽引した人物だ。大髙の「人が快適に働けて、街の景観になる」建物を、全日本海員組合は丁寧に使用して美しい状態で保全した。その建築的価値とともに歴史的・文化的な価値が高く評価され、平成29(2017)年にDOCOMOMO Japan(注)の選定建築物に認定される。

 

(注)20世紀の建築における重要な潮流であった「モダン・ムーブメントの建築」の調査・記録、保存・再活用の提案等を行う国際団体の日本支部。令和7(2025)年4月時点の選定建築物は全国で290件。うち麻布地区は、当本部会館と国際文化会館(前川國男・坂倉準三・吉村順三共同設計、六本木5丁目)の2件である。

 


六本木西公園から眺める外観


サンクンガーデン

 

地域にひらかれた施設

ビル改修に伴い、展示室と図書資料室が新設されて一般公開されている(平日10時~17時)。充実した展示と図書資料から学ぶことは多く、特に「島国である日本の暮らしには海員の働きが欠かせないこと」、「民間の船舶と船員が戦争に徴用された悲劇を繰り返してはいけないこと」を強く実感する。展示室へのアプローチとなっているロビーとサンクンガーデンは、空から光が降り注ぐ、美しく居心地の良いスペースだ。本部会館と六本木通りを繋ぐタイルの小路も整備され、隣接するJSSビル1階の「Roppongi Coffee」から挽きたてのコーヒーの香りが漂う。

歴史的建築物のなかに置かれた贅沢な「知」と「美」の空間が、地域の宝として末永く愛され、大切に利用されることを願ってやまない。

 


子供の目線も考慮して丁寧に作られた展示室


海と船に関する資料を揃えた図書資料室


子供も大人も楽しめる操船シミュレーター
(全日本海員組合提供)


アートな床タイルも竣工時のまま

 


取材協力

全日本海員組合(JSU) 港区六本木7-15-26 https://www.jsu.or.jp/(外部サイトへリンク)
総務局 齋藤洋局長、竹岡優樹さん、庄司沙絵さん、片岡史緒さん
(株)梅ノ木文化計畫 木原進CEO、千葉大学大学院 頴原澄子准教授

 

取材/高柳由紀子、八巻綾子 文/八巻綾子

 

麻布びと 未来へ残したい麻布の声
浄土宗心光院住職 戸松義晴(とまつよしはる)さん

東京タワーの真下、東麻布の地に1393(明徳4)年創建の名刹・浄土宗心光院があります。住職の戸松義晴さんは、1953(昭和28)年生まれ。現在、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の理事長を務める一方で、「DJボウズ」のペンネームで機関紙に音楽に関する記事を連載したこともある大の音楽愛好家でもあります。保育園から大学までのほとんどが徒歩圏内であったという“生粋の麻布っ子”、戸松さんにお話を伺いました。

 


東京タワーの建設工事も見守ってきたという戸松さん。
1955(昭和30)年建立の心光院本堂は国登録有形文化財。

 

東京タワーの麓(ふもと)から、”素顔のままで”街と人をつなぐDJボウズ

戸松さんは心光院の五十代目にあたるそうですが、その歴史についてお聞かせください。

心光院の起源は室町時代に増上寺の学寮として設けられたことに遡ります。江戸時代には増上寺別院となり、その後、芝赤羽橋に移転。長い歴史を経て1950(昭和25)年に区画整理に伴い、現在の地に移りました。戸松家が住職を務めるようになってからは私で三代目となります。

 

保育園から大学まで、大学一年時を除いて徒歩通学だったとか。

そうですね。心光院が近隣の子供たちのために開いた心光保育園(現在は閉園・飯倉保育園に移管)に始まり、麻布小、芝中学・高校、そして慶應義塾大学に進学しました。その後は仏教はじめ宗教を学ぶため大正大学大学院、さらにハーバード大学神学大学院(Harvard Divinity School)に留学しました。中高時代は卓球部に所属し、大学時代では仲間と出張DJの活動をしていました。一日8時間音楽を聴いていたこともあります(笑)。

 

「DJボウズ」としても知られる戸松さん。音楽との関わりについてお聞きすると、「なぜ音楽が好きになったのか理由は自分でもよくわからないんです」と笑いつつ、夕食時にクラシックレコードが流れていた家庭環境が影響したのかもしれないと振り返ります。中学2年で音楽にのめり込み、アルバイトで得たお金でオーディオ機器を揃え、テープ編集やDJ活動を始めました。中学2年の時に最初に買ったレコードはビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」だったとか。

ジャンルも多岐にわたり、ひとつに絞るのは難しいとのことですが、若い頃はモータウン系のソウルミュージックに強く惹かれたといいます。音楽を通じて英語を覚えた経験が、後のアメリカ留学に役立ったと笑顔で語ってくださいました。


DJボウズ、イチ推し!フィラデルフィア・ソウルを代表するヴォーカル・グループ「スタイリスティックス」による1971年リリースのデビュー・アルバム。


モータウン系の貴重なレコードが並ぶコレクション。戸松さん曰く「絶対に売らない!」との事。

 

音楽漬けの学生時代から、住職になる決意をされた経緯は?

子供の頃からお経は習っていましたが、年に数回、行事の手伝いをする程度で、両親は放任主義でした。大学4年の時、アルバイトをしていた音楽制作会社から就職の打診を受け、このまま入社するか寺を継ぐかの選択を迫られました。その時、幼い頃から可愛がってくれた檀家さんと会えなくなるのが寂しいと感じ、心光院を継ぐ決心をしました。

 


江戸名所図会『赤羽心光院』 提供 心光院HPより

 

生まれ育った麻布について、どのように感じておられますか。

麻布というと高級住宅地のイメージがありますが、私が麻布小に通っていた頃は商店や銭湯(本誌64号「麻布の軌跡」)、長屋も多く、庶民的な雰囲気もありました。落ち着いた高級住宅街と下町の面影が同居しているところが麻布の魅力だと思います。

そして、住んでいる人がずっと住み続けられるような街であってほしいと願っています。

戸松さんは、 地域の未来についても思いを巡らせています。人と人との関わりを大切にしたいという思いから、町会や若者の集まりに寺を会場として提供、本誌66号「地域社会のゆくえ」で登場いただいた麻布台商店街会長・伊澤諒太さんも、「寺に集うひとり」だそうです。

また、災害時における宗教施設の被災者受け入れにも取り組もうとしています。2025年4月28日、戸松さんの所属する東京都宗教連盟は東京都と包括協定を結び、都内約4,000か所の宗教施設を避難所や支援拠点として活用する体制を整えました。戸松さんは特に、避難所生活が困難な障害のある方の受け入れにも力を入れたいと、具体的な方法を模索しています。“Don’t manipulate yourself”(「自分に正直に、信じることをきちんと言葉にする」)。アメリカ留学で得たこの信念を今も大切にしているそうです。

もうひとつ、心に刻んでいるのが、ビリー・ジョエルの名曲“Just the way youare”(素顔のままで)。「多様性に富んだ社会の中ではまずありのままの自分を受け入れることが、他者を認め、誰かのために役に立つことにつながるのではないでしょうか」

数々の責任ある仕事を明るく軽やかにこなしながら、飾らない笑顔で語る戸松さん。その姿は、まさに“素顔のままに”街と人をつなぐ存在でした。

 


五代将軍綱吉公の生母・桂昌院も信奉した「お竹」のお竹如来像と流し板(港区登録有形文化財)を祀るお竹堂。


東京タワーを望む、1743(寛保3)年建築の心光院表門(国登録有形文化財)は人気の撮影スポット。

 

浄土宗 心光院 港区東麻布1-1-5 shinkoin.com(外部サイトへリンク)

 

取材/石橋克彦、飯泉千種、佐藤正子、高柳由紀子、田中康寛、Sumiko、堀切道子、山崎絢加
文/飯泉千種、山崎絢加

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