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更新日:2024年8月1日
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2024年5月1日(水) 1時限
担当講師 畠山 達
テーマ ボードレールとパリ大改造―都市計画と芸術の関係について―
本講義では「パリ」という都市の価値がどのように作られ、継承されてきたか注目した。明治以降の日本では、特に雑誌『明星』に関連した作家や詩人たちの影響が大きいことを最初に確認した。次に、大改造以前をバルザックのパリ、大改造以後をゾラのパリ、大改造過渡期をボードレールのパリとしたうえで、実際のパリという町の変化と美学的な変化を交えながら複層的に認識することを目的とした。
まずは、オスマンのパリ改造がどのようなものであったか、過去のパリがどのようなものであったか、地図、写真、諷刺画などを紹介しながらできる限り詳細に説明をした。オスマンの改造を以下の五点(①大通りの新設、②公園・広場の造成と整備、③建造物の修復と建設、④上下水道の整備・拡張、⑤街灯の増設)に分類し、その目的と特徴、さらには現在の様子を交えて立体的に浮き上がらせた。
次に、中世の面影を残していたパリが姿を変えていく様子を、ボードレールはどのように歌ったか、三つの詩篇「後光の紛失」(散文詩)、「通りすがりの女性へ」(韻文詩)、「白鳥」(韻文詩)を通して考察を加えた。「後光の紛失」では諷刺的かつ皮肉を交えて描かれる詩人の姿、「通りすがりの女性へ」では、儚さの中に見出された永遠の美、「白鳥」では、壊されるパリが起動装置となって、記憶や思い出という不可視のものに至ることができることを説明した
実は『明星』に関連した多くの芸術家たちはこのようなボードレールの影響を強く受けていた。つまりボードレールの目指した現代性の美の理念を近代の日本は強く受けていたのであり、我々もそれを受け継いでいたことを確認した。港区という「都市」も新しい価値を持つためには、こういった理論や方法を参考にすることができるだろう。
2024年5月1日(水) 2時限
担当講師 岡本多喜子
テーマ 高齢者福祉② ―高齢者福祉の歴史と現在―
高齢者福祉の歴史は老人ホームの歴史でもあるため、明治期に最初に養老院という名称を用いた聖ヒルダ養老院(港区)や神戸養老院(神戸市)についてのDVDを鑑賞した。その後の高齢者福祉の発展過程を、救護法や生活保護法のなかでの位置づけ、さらに老人福祉法の制定によって、高齢者に関わる政策がどのように変化していったのか、介護保険法の現状までの流れをおさえた。最後に港区で始めた「救急医療情報キット」の説明を行った。
2024年5月8日(水) 1時限
担当講師 三輪清子
テーマ 児童福祉① -児童虐待と社会的養護―
現在の日本における児童虐待について、定義、変遷、児童虐待の窓口にあたる児童相談所、統計データなど様々な角度から概観した。
まず、児童福祉の中でも特に注目を浴びている児童虐待というトピックをあつかうにあたり、その背景となる日本の児童福祉の現況の概要を確認した。そのうえで、児童虐待の種類と各々の定義を確認するとともに、児童虐待の変遷をたどり、児童虐待というものが時代や文化によって異なる解釈があることを説明した。
そして、児童虐待の加害者が誰なのか、その要因は何かについて、データに基づいて説明した。また、児童虐待の通報があったとき、どの機関がどの様に対応するのか、など、児童虐待通報から子どもの保護までの一連の流れについて説明した。
最後に、映画の抜粋を視聴し、児童虐待を少しでもなくすために、地域の中で「自分」ができることについて考えていただいた。
2024年5月8日(水) 2時限/2024年5月18日(土)午後
担当講師 山下裕二
テーマ 日本美術史を愉しむために
「日本美術史を愉しむために」と題して、5月8日に明治学院大学で講義、18日に港区芝公園の増上寺の宝物展示室、徳川将軍家墓所で見学会を実施した。
21世紀に入ってから、世間一般の日本美術に対する関心は確実に高まってきており、近年では美術館、博物館における大型企画展などは、コロナが明けたこともあって、多くの観客を集めている。受講者にも日本美術に深い関心をもっている方が多いだろうことが予想された。
講義では、現在首都圏で開催中の展覧会リストを配布し、東京国立博物館、出光美術館、東京藝術大学大学美術館、山種美術館などの展覧会について解説し、私が顧問をつとめている山種美術館の招待券を配布した。
また、見学会を予定している増上寺については、宝物展示室に展示されている幕末の画家・狩野一信筆「五百羅漢図」に関する講義を行った。かつて私が2007年に監修して作成したこの作品に関する映像を見せて、その美術史的な意義について詳しく説明した。
美術館ホームページなどを投影しながら話を進めたが、受講者にインターネットの利用状況を尋ねたところ、高齢者であるにも関わらず、多くの方がネットを活用して展覧会へ出かけていることを確認し、日本美術への関心の高さを再認識した。
増上寺の見学会では、僧侶の横川氏から歴史、沿革、宝物館の展示の概要について手短にレクチャーしていただき、その後、徳川将軍家墓所にもご案内いただき、受講者から個別の質問を受けた。増上寺には来たことがあるけれど、宝物展示室に入るのは初めてだという受講者がほとんどだった。歴史に関心が深い受講者も多数いて、多くの方に見学会を楽しんでいただくことができたと思う。
2024年5月15日(水) 1時限
担当講師 三輪清子
テーマ 児童福祉② ―社会的養護・里親教育―
何らかの事情で実家庭で暮らせない子どもを公的に養育することを社会的養護という。児童虐待を受けた子どもが保護される場合、その多くが社会的養護を受けることになる。そして、社会的養護を受ける子どもの措置先は,施設か里親委託となる。2回目の講義では、この社会的養護、とりわけ、現在注目を集めている里親委託について紹介した。
まず、子どもの権利について、「子どもの権利条約」2016年改正児童福祉法などから考えていただいた。
次に、家庭で育つことは子どもの権利であるという観点から、里親養育について紹介した。最初に、日本で里親委託が推進されるようになった経緯や里親養育の意義を確認した。さらに、YouTube動画を視聴し、里親の様子、すでに自立した子どもへのインタビューなどの様子を見ていただき、実際の里親の雰囲気を知ってもらった。また、東京都の里親の要件や里親に登録し受託するまでの流れについて触れた。さらに、講師の体験も交えながら、里親が子どもを受託してからの養育について理解を深め、里親への支援などについて触れた。子どもが、里親などの家庭で養育されることは重要だが、本来的にはできるだけ子どもたちが実の家庭を離れないでサポートしていけることが重要であることも併せて確認した。
2024年5月15日(水) 2時限
担当講師 森田恭光・黒川貞生・杉崎範英・土屋陽祐
テーマ 運動処方入門 -体力測定の方法を学び、自己の基礎体力を把握しよう-
健康の維持・増進を目的として、運動を安全で効果的に実施するためには、自己の健康・体力に応じた適切な運動やエクササイズを計画し、計画された運動やエクササイズを実践することが重要です。このように薬を処方することと同様に運動を処方することを「運動処方」と言います。
本実習では、運動処方入門編として、運動処方を行う際に基礎的データとして必要となる各種体力要素のレベルを把握するための体力測定について、その意義および安全に行うための実施方法と評価方法を講義・実習を通じて解説しました。
今回の体力測定は、文部科学省が推奨している「新体力テスト」に基づいて実施しました。体力測定実施あたり事前に、ADL(日常生活活動)テストおよび健康状態のチェックを行っていただき、それらの結果に基づいて体力測定テスト項目のスクリーニング方法について講義を行いました。体力測定における各テスト項目の実施方法については、年齢によってテスト項目が異なるため、20〜64歳と65歳以上のグループに分かれて講義・実習を展開しました。
各グループとも熱心に講義・実習に取り組み、健康づくりにおける体力測定の意義、実施方法、評価方法および活用方法について理解が深まったものと思われます。
2024年5月22日(水)1時限
担当講師 高倉誠一
テーマ 特別支援教育を巡る状況 -障害と特別な教育的支援―
この講義では、①障害児教育の歴史を概観し、②特に、戦後の知的障害教育の歩みを紹介し、③特別支援教育の状況と今日的な課題を取りあげた。障害のある子どもの教育は、篤志家と呼ばれる人々による民間努力から始まったが、例としてヘボン博士やフォールズ博士のエピソードを紹介。知的障害教育は、伝統的な教育から離脱して、子どもに合わせて教育を作る試行錯誤の経緯があったこと。その当時の知的障害特別支援学級の実験校が、目黒にある自然教育園の敷地内にあったことなどにも触れつつ、障害児教育の歴史と関わる人々に思いを馳せる機会とした。最後に、発達障害を含めると障害のある子どもは約15%に及ぶことを紹介、特別支援教育の今日的な課題について述べた。
2024年5月22日(水) 2時限
担当講師 土屋 陽祐
テーマ 心と身体のリフレッシュ(Ⅰ)-暮らしの中でのからだづくり-
本講義は実技を中心に、柔軟性の向上や姿勢矯正のためのストレッチング、ストレッチポール、転倒予防のための自体重による伸張性収縮(エキセントリック)トレーニングを実施しました。また、実技の実施に伴い、それぞれの有効性に関するエビデンスも適宜紹介しました。
ヒトは加齢に伴い、柔軟性が低下し関節の可動域が狭くなります。柔軟性の低下は転倒・骨折リスクの一因です。また、柔軟性が高いヒトでは動脈硬化度が低いことなどが報告されています。したがって、高齢者における柔軟性の改善は重要な課題であるといえます。そこで本講義では、柔軟性を向上させるストレッチング、脊椎アライメントの矯正のためのストレッチポールの実践方法を紹介しました。実際に、ストレッチングによる柔軟性の向上やリラックス効果およびストレッチポールによって背中が地面にピッタリと接地する感覚を実感していただきました。
さらに、加齢に伴う生活の質(QOL)の低下には、筋量および筋力低下が大きく関与しています。したがって、高齢者に対する筋力トレーニングも極めて重要であることはいうまでもありません。しかしながら、高強度の筋力トレーニングは血圧の上昇や血管内皮機能の低下などの危険性が伴います。そこで近年、エキセントリック運動を取り入れた筋力トレーニングの有効性が報告されています。エキセントリック運動は、荷物を降ろす動作や、階段を降る際に筋が力を発揮する運動です。つまり、ブレーキをかけながら耐えるような運動です。この運動は、心臓血管系への負担が小さい中で、骨格筋に負荷がかかることから、高齢者や高血圧症、糖尿病患者に対してより有効であると考えられています。本講義では、自宅でできるエキセントリックトレーニングの方法も紹介し、実践しました。
2024年5月25日(土) 3時限
担当講師 巖谷國士
テーマ 港区の風景と文化-縄文時代から現代まで-
まず港区という地域の地形と太古からの歴史、その結果いまにのこる自然と都市の風景、生活や文化について、地図などを用いて概観したあと、戦災をまぬかれた明治学院の代表的な建築物、インブリー館、記念館、ヴォーリズの礼拝堂と、さらに近くの旧・高輪消防署、プロテスタント高輪教会、カソリック高輪教会などの芸術的・歴史的な意義について、映像を見ながら講義し、次回の見学にそなえる説明も加えました。
2024年5月25日(土) 4時限
担当講師 巖谷國士
テーマ 港区の風景と文化-見学と散策-
最初に教室で日本各地の教会建築、とくにウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計による教会について画像を見ながら講義し、明治学院の歴史についても概観した上で、インブリー館(旧宣教師館、1889年造)と明治学院記念館(旧神学部・旧図書館、1890年造)の外部を見てから、明治学院礼拝堂(1916年造)の内部に入り、このチャペルの歴史と建築様式、美術的・宗教的な意義や、設計者ヴォーリズの生涯と作品などついての講義をし、さらに記念館の礼拝堂も見学して、17時前に解散しました。
2024年度5月29日(水) 1時限
担当講師 野村信威
テーマ 認知症の理解とその予防 ―認知症ケアの心理的アプローチ―
本講義では,老年期に特徴的なこころの病である認知症について紹介しました。認知症の症状には粗大な物忘れなどの中核症状と,不眠や徘徊,妄想などの周辺症状に分けられます。認知症の主なタイプは,アミロイドβの蓄積から脳が萎縮するアルツハイマー型,レビー小体の沈着から起こるレビー小体型,脳梗塞や脳卒中の後遺症として生じる脳血管性などに分けられ,それぞれ症状や進行に違いがあります。そして認知症の予防には,食事や運動,睡眠などの生活習慣のよい生活習慣のサイクルが重要なことをお話ししました。また,もしも何か思い出せないことがあってもその問題に対処する方法があることは軽度の認知症の人であっても変わりはないことや,実際に認知症の人がたどる診断までの経過には何年間もの違いがあり,初期に医師の診断を受けた人は症状に対処する能力や資源が充分残されている一方,異変を察知してから診断までに何年間も経過した場合には本人が症状の進行に対処する貴重な機会が失われてしまう場合があることをお話ししました。
2024年度5月29日(水) 2時限
担当講師 野村信威
テーマ 認知症とともに生きる ―共生社会の実現にむけて―
「認知症とともによく生きる(Living Well with Dementia)」とは,2009年にイギリス保健省が掲げた認知症国家戦略のスローガンであり,患者本人への告知を含む早期診断と治療の徹底,診断後の質の高いケアが重視されました。筆者はこの戦略の成立に大きな影響をおよぼした認知症当事者のジェームズ・マキロップ氏にインタビューを行い,その内容を紹介しました。また認知症の症状それ自体の進行は止められないものの,認知機能の低下と折り合いをつけ,認知症でも自分らしく生きることが出来るという価値観の変化から幸福感を維持できるというモデルについて紹介しました。
講義の後半には,認知症とともに前向きに生きる当事者の方とそのパートナーをゲストとしてお招きし,認知症とともに生きることについてありのままにお話しいただきました。
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