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明治学院校歌は1906年に制作された。作詞者は島崎藤村である。この年、藤村は『破戒』を発表し、一流作家のひとりとなる。一方でこの時期の彼の私生活は相次ぐ子供の死去など、けっして幸福とはいえない状況にあった。校歌にはそのような藤村の希望と苦悩が反映されている。それを読み解く鍵となるのが、歌詞にある「緑葉」の語であろう。
藤村にとって、これに先立つ明治学院での学生生活や文学界の仲間との出会い、恋愛等は「春」の季節であった。輝かしい日々への追憶は美しい詩のことばとなって、『若菜集』に結実する。しかし、やがて彼は散文の世界へと転身する。1907年に出版された短編集『緑葉集』には、過酷な現実に翻弄される者たちが描かれる。いずれも藤村の現実が生み出した影法師である。季節は「夏」。緑葉はもはや人生の「春」を過ぎた者たちの時間の謂いである。
そして校歌は、緑葉の下に集う若者に「心せよ」と呼びかける。緑葉の語がもつ意味を藤村に即して考えるとき、この「心せよ」は若者たちの多難な人生を暗示して苦く、重い。
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