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更新日:2022年3月18日

芝地区の地域情報誌(最新号)

 芝の老舗「装潢堂 伊藤表具店」
大切な書画や書物を美しく保存 大正から伝統の技法を守り続ける


裂地(きれじ)を裁断する髙橋さん

桜田通り沿いの三田交番横の公園脇にある細い路地を入った、静かな住宅街に「表具師装潢堂」の看板が掲げられた「伊藤表具店」があります。

「装潢堂」として大正末期に麻布で創業。2代目の伊藤良雄さんは、10代半ばから表具師として修行を始め、戦後、三田の地で父親の跡を継ぎました。平成24年(2012)10月、「港区無形文化財」に指定された江戸表具師の一人です。伝統技術を次の世代にも伝えるべく、住宅兼仕事場で、伊藤さんの娘さんの夫・髙橋直樹さんとともに、「装潢堂伊藤表具店」を営んでいます。

受け継がれる匠の技


仕事場にて、左から、髙橋さんと、育実さん、そして2代目・伊藤さん
(撮影のときだけマスクを外していただきました)

伊藤さんの2階の仕事場では、天井から「仮張板」がいくつも下げられています。部屋の隅には修復を受注した屏風が数隻(すうせき)、壁には掛軸が数幅(すうふく)かけられています。御板(おいた)(小上がり状の作業台)には、巻物が数多く並べられています。御板の下は引き出しになっており、象牙や竹、陶器、金物などさまざまな種類で造られた軸先(軸棒の左右両端に取り付ける部分で、掛軸を巻く際の持ち手)が保管されています。

京表具は公家文化から始まっているため、きらびやかで雅(みやび)な趣。一方の江戸表具は武家社会が求めた、落ち着きある粋な趣。控えめで優しい笑顔の伊藤さんによる、小粋で洒落(しゃれ)た江戸表具は、作品に活き活きした息吹をもたらします。表具にゴールはなく、いつも課題と挑戦を繰り返しています。

次の代を担う髙橋さんは、サラリーマンを務めた後、この道に進まれました。伊藤さんの卓越した技術はもちろん、落款(らっかん)で作家や年代を判断できる知識を、粛々と修行されています。表具技術の向上と絵画鑑賞形態としての掛軸の発展を目指し、美大生と表具師がコラボレーションをする美術展(江戸表具研究会・表粋会)にも、積極的に取り組まれています。

また、伊藤さんのお孫さん、すなわち髙橋さんの長女・育実さんが、伊藤表具店のWebサイトやInstagramで、表具の発信を行うなど、美しい匠の技は、次へ、また次の世代へと、さまざまな形で受け継がれています。

店名になった「装潢」とは

書画(文字と絵)または書物といった「作品」は、そのままでは飾れません。そこで、作品の本体となる紙「本紙(ほんし)」の鑑賞、さらには保存のため、和紙や織物(裂地(きれじ))を合わせ、糊で貼って、巻物(巻子(かんす))や掛物(掛幅・掛軸)に仕立てます。または、木の枠に貼って、屏風(びょうぶ)、襖(ふすま)、衝立(ついたて)に仕立てます。この仕立てを「表具」や「表装」といい、仕立てる職人を「表具師」といいます。

数百年前の書画や書物が、今も美しく保存され、鑑賞できるのは、本紙を裂(きれ)や和紙で補強し、仕立て直しているためです。この仕立てる技術は、中国・唐の時代に生まれたといわれ、遣唐使らの手により、仏教伝来とともに中国から日本へ伝わりました。

奈良時代、お経を書いた書物「経巻(きょうかん)」を、綴(と)じて、表紙をつけるなどの「装丁(そうてい)」をしたのが、日本で最初の「表具」。これを「装潢」と呼んでいたそうです。「装」は截断(せつだん)、「潢」は紙を染めること。店名の「装潢堂」の由来はここにあります。

「床の間に掛軸」でおもてなし

こうして中国から経典流布とともに伝わった「表具」は、時代とともに、日本独特のおもてなしスタイルとして確立していきます。

鎌倉時代から室町時代にかけて、禅宗に関わる書画の「掛軸」が広まりました。日本独自の室内様式である遊空間「床の間」が設置され、その床の間に合う装飾品として、表具の形態が完成されました。

江戸時代には、茶の湯の隆盛により、茶室用に仕立てられた「茶掛表具」が現れました。そして茶の湯とともに、より一般化され、庶民にも使用されるようになりました。

季節や行事ごとに「掛軸」を変え、客人をもてなすのは、四季が豊かな日本人の精神の象徴でしょう。現在、居住空間の洋式化にともない、表具は床の間だけでなく、壁面を飾るように工夫された「額装(がくそう)」や、「衝立」などに発展しています。

従の表具が本紙を輝かせる

表具師は接着の専門家と呼ばれます。使用する糊は小麦粉から作る生麩糊(しょうふのり)です。布に紙で裏打ちをするときは、粘性の強い炊き立てのものを使用します。傷んだら水で糊をゆるめて裏打ちを剥がし、修復することが可能です。最近では化学糊も使用し、正しく使えば将来の修復も可能だとか。ただ機械でプレスする方法では、水による剥離は不可能で、修復することは困難だそうです。

木地や下張りといった土台が良ければ、長い年月、上張りを張り替えるだけで持ちます。一枚一枚、糊が乾くのを待ち、貼り重ねる根気と、薄く軽い紙を貼る細かな技術が求められます。

時代背景や作品の寸法など、表面から見える部分や使用する紙には、多くの決まりごとがあります。掛軸の場合、表具が本紙より目立たず、しかも魅力的に見せる裂地の選定が重要です。裂は縦糸と横糸で縫われ、縦糸と横糸の色を変えることによって文様が形成されます。糸の種類や織り方によりさまざまな文様に仕上がります。

日本の文化を新しいスタイルで

伊藤さんが選ぶ裂地は、植物を扱ったもの、唐草文様のように継続的な柄が連綿として途切れることなく続いていくもの、一個の独立した文様が等間隔に並べられているもの、幾何学文様になっているもの、ペールトーンのお洒落な色味のもの、落ち着いた雰囲気のものなど数多くありますが、それらを取り合わせるセンスがとても大切だと言います。色、柄、風合い。この3つの取り合わせが、作品である本紙との兼ね合いの中で、さまざまな様相を生み出すからです。

中でも重要なのが、本紙とのバランスです。本紙を主とするならば、表装は従とされます。そのため、本紙の魅力をより一層際立たせるために表装されなければなりません。出過ぎず、出なさ過ぎず。この塩梅(あんばい)が表具師の腕にかかっています。

「裂は、お客さまが選ばれることもありますが、バランスや格合わせが容易ではないので、表具師に任せていただいたほうがいいですね。表具を気に入ったお客さまは、リピートされることが多く、表具師としてとても励みになります」と伊藤さん。家の中で豊かに暮らす術として、掛軸や屏風、額装を取り入れ、自然や季節を楽しむ、日本人の精神を生かした、新しい生活スタイルが広まることを期待します。

 

伊藤さんが大切に保管している裂地。素材や作り方によりランクがあるそうです

玄関先に掲げられた「表具師」の看板

 


霧吹きで水を吹き付け、元の裏打ちを剥がしていきます。このとき、墨や絵の具がにじまないのは、膠(にかわ)が入っているからです。日本人が何百年も続けてきた表装の文化は、持続可能な伝統技術として新たな視点でとらえることができると感じました

裏打ちを剥がし、洗浄したあとで、新たに裏打ちを行います。本紙や布(裂)に対して、糊を付けた和紙で補強します。糊の水分を吸って裏打ち紙も本紙も伸びるので、しわがなくなります

 


取材:森明/早川 由紀
文:早川 由紀

INFORMATION

装潢堂 伊藤表具店 三田2-11-3

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 Shiba Topics 産学連携プロジェクトから生まれた小さなケーキ屋さん
"cake to go(ケーキ トゥー ゴー)"

芝園橋の交差点にある、白い看板が目印の「cake to go(ケーキトゥー ゴー)」は、テイクアウト・デリバリー専門のケーキ店です。4月1日でオープンから1周年を迎えます。産学連携プロジェクトから生まれたこの小さなケーキ屋さんをご紹介します。

区内空き物件を有効活用

「cake to go」は、戸板女子短期大学と株式会社ランビックによる「2020年産学連携プロジェクト」の第1号店舗として誕生しました。社会問題となっている区内の小規模空き物件について、国際コミュニケーション学科1年生全員が、コンセプト、ネーミング、店舗内外装をランビックと企画開発し、港区全域のオフィスや住宅においしいケーキを届けています。

おすすめは「とろける生チーズケーキ」

間口1間ほどの小さな店内には、ショートケーキやチーズケーキなどの定番スイーツはもちろん、旬のフルーツを使ったケーキなど、パティシエ手づくりのケーキが華やかにショーケースを彩ります。ランビックはOEM方式(他社からの注文製造)によりケーキを販売している会社です。「cake to go」は工場から直接販売しているので、どのケーキもとてもリーズナブル。どれにしようかと迷ってしまいます。店長の土肥 深月(どひ みつき)さんのおすすめは「とろける生チーズケーキ」。一口食べれば、みずみずしい食感で、チーズのコクが口いっぱいに広がります。


ショーケースの中にはおいしそうなケーキがいっぱい!


土肥店長イチオシの「とろける生チーズケーキ」

学生プロデュースの限定メニュー

戸板女子短期大学の学生がプロデュースした商品が、店頭に並んだこともありました。令和3年(2021)の「産学連携プロジェクト」の一つとして、学生が「デリバリーで届いたときに“ハッ”とするケーキを考えよ!」というテーマに取り組みました。食物栄養科の学生が30チームに分かれて、ランビック代表取締役の藤堂正健さんの協力も得ながら、立案や利益を生み出すための原価計算、話し合い、改善、プレゼンテーションなどを行いました。そして、上位3チームのプロデュースしたケーキが、10月に店頭に並びました。また近隣ホテルのケーキメニューにも加えられたそうです。

戸板女子短期大学の学生さんが考えました!

戸板女子短期大学の学生とコラボした3種類のケーキ(期間限定販売)。左から、レアチーズケーキの中にリンゴのコンポートを刻んで混ぜ込みタルト台にのせた真っ赤なハートが特徴的な「Happiness to you」、シュー生地の中に苺のカスタードクリームと苺のダイスを入れて生クリームで雲をイメージした「くるん」、抹茶のレアチーズケーキの中にラズベリージャムが入った「チーズっ茶」


ランビックの工場にて、戸板女子短期大学の学生が試作品を試食。社員の方との意見交換を行いました

普段づかいできるケーキ屋さん

「cake to go」は、オフィスが多い場所柄、ランチのあとのデザートを買い求める会社員の利用客も多く、ビジネスの会食などでまとまった数の注文が入ることもあるそうです。またホールケーキも取りそろえており、誕生日などの家族のイベントのための予約も入ります。「お手頃な価格なので、特別なイベントやがんばったごほうびだけではなく、いつでも気軽に立ち寄っていただきたいのです」と土肥店長。

「ケーキを買って帰られたお客さまが、ご家庭で皆さんと召し上がっている様子を思い浮かべたり、実際に会話したりしながら応対することを心がけています」。そうすることで顔なじみになって、道路の反対側から手を振ってくれる常連さんもいるそうです。

「cake to go」の白い看板は、1周年を迎えてすっかりまちの風景に溶け込んでいます。


毎日でも立ち寄りたい!


店長の土肥さん


取材・文:菊池 弓可

Information

cake to go 芝3-4-11

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