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新橋-横浜間に日本初の鉄道が開業したのは明治5年(1872)。今年で鉄道開業から150年を迎えます。開業記念式典は大変華やかなものだったことが、錦絵などの資料に残っています。開業当時の駅舎跡は国の史跡に指定され、現在も汐留地区に保存されています。「旧新橋停車場 鉄道歴史展示室」の管理運営をしている公益財団法人東日本鉄道文化財団の学芸員の方にお話を伺いました。
旧新橋停車場駅舎の100分の1模型
公益財団法人東日本鉄道文化財団の学芸員さん
汐留といえば、超高層オフィスビルが立ち並び、地下通路や広場でつながる近代的な街並みを思い浮かべるでしょう。旧新橋停車場はその超高層オフィスビル群の谷間にあります。石造り2階建ての外観は、時代をタイムスリップしたかと錯覚してしまいそうです。
「あれ? 鉄道の始まりはSL広場じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。いえいえ、日本の鉄道開業の地である新橋駅は汐留にあったのです。
再現された駅舎正面外観
1990年代に汐留地区再開発が始まり、それと並行して埋蔵文化財の発掘調査も行われました。そして江戸時代の大名屋敷跡のほか、旧新橋停車場の遺構も良好な状態で発掘されました。開業当時の駅舎は、関東大震災により焼失していますが、建物の鮮明な写真なども残っていたため、発掘された遺構の上に当時の姿が可能な限り正確に再現され、平成15年(2003)4月に「旧新橋停車場」として開館しました。
館内の鉄道歴史展示室では新橋停車場に関する貴重な資料が公開されています。展示資料の中には、当時の乗車券(複写)や、駅弁と一緒に売られていた陶器やガラス製のお茶の容器などもあり、当時の新橋駅のにぎわいが思い浮かびます。また、発掘された遺構の一部は見学窓を通して公開されており、開業当時のプラットホームや線路、「0ぜろ哩まいる標識※」も復元されています。取材時、2階の展示室では、鉄道にまつわるさまざまな事柄を紹介する企画展が開催され、鉄道ファンが熱心に見学していました。
※明治3年(1870)に鉄道建設が始まった時の新橋側の測量起点。
復元された線路と0哩標識
2階は、企画展示スペースとなっています。写真は、今年7月20日から11月6日まで開催された第58回企画展「鉄道開業150年記念 新橋停車場、開業」の様子
明治5年(1872)10月14日に「鉄道開業式」が執り行われました。プラットホームは万国旗や提灯で華やかに飾られ、明治天皇を護衛する近衛兵、停車場周囲に配置された騎兵隊、直ひたたれ垂姿の役人や見物客も集まりました。盛大な当日の様子が錦絵に描かれ、写真にも残っています。明治天皇が乗車した「お召し列車」には、各国公使や西郷隆盛、大隈重信、勝海舟、山縣有朋など明治政府の要人のほかに、徳川、池田、毛利などの公爵家も乗車し、新橋-横浜間を往復しました。
鉄道開業によりこれまで数日かかっていたところ、短時間で人や物を運ぶことが可能となり、日本の産業は発展して、鉄道は日本近代化に大きく貢献しました。日本の近代化の原点にぜひ足を運んでみてください。
東京汐留鉄道御開業祭礼図 明治5年(1872) 中村俊一朗所蔵
汐留ヨリ横浜迄鉄道開業御乗初諸人拝礼之図 明治5年(1872) 鉄道博物館所蔵
テレビの街頭インタビューでおなじみのJR新橋駅日比谷口にある西口広場。本物の蒸気機関車-SLが置かれていることから「SL広場」と呼ばれ親しまれています。なぜあそこにSLが置かれているのか知っていますか?
SLはC11形蒸気機関車で、もともと姫路機関区に所属し中国地方を走行していましたが、鉄道開業100年にあたる昭和47年(1972)に旧国
鉄から港区に無期限で無償貸与されました。毎日正午・午後3時・午後6時に汽笛を鳴らし、クリスマスシーズンになるとイルミネーションに彩られ、道行く人の目を楽しませてくれます。
取材・文:菊池 弓可
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