ここから本文です。
港区役所1階ロビーの一角にある休憩スペース。来所する方々が思い思いにすごすその奥に、なにやら気になるショップがあるのをご存じでしょうか?
ここが、障害者の皆さんが精魂込めて作ったクッキーやさまざまな工芸品、有機野菜などを購入することができる福祉売店「はなみずき」です。お店の中にも障害者の方がいて、訪れる方々とのコミュニケーションを楽しんでいます。たくさんの笑顔が私たちに生きる力を与えてくれるのです。
「いらっしゃいませ〜」
お店の前で商品を見ていると、どこからか声が聞こえてきます。どこだろうとキョロキョロしていると……見つけました!
真っ白なボディに身を包んだ小さなロボットからでした。移動が困難な重度の障害者が、自宅のパソコンやスマートフォンなどを用いて分身ロボット(OriHime)を操作し、商品の案内などの接客業務をしているのです。
取材した日はクリスマス直前。メガネをかけたロボットと、サンタクロースの衣装をまとったロボット2台が手や首を動かしながらお出迎えしてくれました。OriHimeを通して障害者の方とお話ができ、ほっこりとした気持ちに。ついつい財布の口が緩んでいっぱい買ってしまいました。
「はなみずき」では、区内にある13の事業所と、港区が連携している3つの自治体の商品を取り扱っています。ここでは区内事業所の商品の一部を紹介します。
クッキー
(工房ラピール)
マドレーヌとスノーボール
(みなとワークアクティ)
グラノーラ
(HIKARI CAFE)
レギュラーコーヒー
(工房ローズマリー)
「さをり織り」のバッグとハッピーキャット
(工房ラピール)
ハートのマグネット
(みなと工房)
アクリルたわし
(西麻布作業所)
手漉(てす)き和紙
(風の子会)
フラッグをリサイクルしたトートバッグ
(アトリエ・レダクラフト)
ここで働いてもう8年目ぐらいになるというAさん。「お客さまが自分のことを覚えてくれていて、あなたに会うために買いに来ているのよって言ってくれたことがとてもうれしいです。それによそで買ったお菓子などをぜひ食べてねと持ってきてくれた人もいました。つい最近も、たあいもない話だけど、今日はこんなことがあったのよと話しながら、商品を買っていってくれたこともありました。区役所の職員や警備員、受付の方々と話ができるのも楽しいです」と、本当にうれしそうに話してくれました。最初は人と話をすることに戸惑いがあったというAさんですが、今ではすっかり大丈夫になって、とても居心地がよいそうです。
働き始めて1年ちょっとというBさんは、事務作業が得意で、電話対応もしているそうです。「店長がやさしいんです。お客さまとの会話は少ないんですが、皆さん思いやりがあっていい人ばかり。緊張しやすくて、最初はけっこう大変だったんですが、まわりの方のサポートもあってだいぶ緊張もやわらいできました」と、ちょっと照れながら話してくれました。
「はなみずき」でさまざまなお客さんと接することで、障害者の方にとっても、よい影響が出ているようです。
「はなみずき」にはさまざまな商品が置いてありますが、それらは一体どのように作られているのでしょうか? そこで、クッキーやマドレーヌ、スノーボールなどの焼き菓子を提供している「みなとワークアクティ」にお邪魔して、その製造現場を見せてもらいました。
焼き菓子の製造で許可をとっているとのことで、衛生管理も万全。見学に入るときも、帽子や白衣をきちんと着込んで入室。製造室の中に入ると、成形、焼き、封入まですべて障害者の方が手作業で行っていました。職員の方が時間や個数などを一人ひとりに確認しながら、それぞれが与えられた仕事を丁寧にこなします。
「“福祉”ということを言い訳にしたくない」と、施設長の柴田さん。障害者が作っているからではなく、おいしいから買う──それが一番大切なことだと感じました。
製造室の様子
「はなみずき」に置いてあるクッキーや美しい「さをり織り」を作っているのが、高輪1丁目にある「工房ラピール」。ものづくりに軸を置き、障害者一人ひとりの個性を生かした就労支援をしています。ここで作られる「さをり織り」は個性豊かな作品でいっぱいです。一人1台ずつ割り当てられた織機の前に座り、自由な発想で色や糸を選び、織物を紡いでいきます。
その真剣な姿は作家そのもの。ぜひすばらしい作品たちに触れてみてください。
もともと自由な織り方が特徴の「さをり織り」。技法もさまざまで、縦糸が抜けていようとそれも個性の一つ。だから感性豊かな障害者にぴったりです。皆さん楽しそうに取り組んでいます。
NPO法人工房ラピール 高輪1-4-8 TEL03-3444-5223
結婚式などで使うぬいぐるみの縫製を中心に作業を行っている「アトリエ・レダクラフト」。プロジェクトの一つとして、「はなみずき」に置いてあるフラッグを再利用したトートバッグの縫製も行っています。手縫いとミシンのチームに分かれ、手分けをしながら、さまざまな作業を行っています。「業務を細分化し、裁断などの作業をほかの福祉の事業所に出しているんです」と、代表理事の我妻さん。確かな縫製技術を武器に、全国の事業所とも連携しながら、“福祉”という枠を超えた総合的な“縫製工場”を目指しています。
カットされたフラッグを手慣れた手つきで、次々と縫製していきます。
一般社団法人レダクラフト 麻布十番4-4-1 TEL03-6435-0611
NPO法人みなと障がい者福祉事業団
福祉売店「はなみずき」
芝公園1-5-25 港区役所1階
TEL:03-3578-4041
営業時間:9:30~16:30
休日:土・日・祝日・年末年始
芝パークホテルは終戦後、外国貿易使節団用のホテルとしてオープンし緑豊かな歴史ある芝の地で「おもてなしの心」を常に大切にして愛されてきました。
コロナ禍に「人、街、歴史をつなぐLibraryホテル」としてリニューアル。もともと、江戸時代に増上寺の学寮だったことがヒントとなっており、リビングのように落ち着いて過ごせる空間を演出し、美食と本の出逢いがあるホテルに進化しました。
1階ライブラリーラウンジのテーマが「普遍的で揺るぎない美」。2階ホワイエのテーマが「人、街、歴史をつなぐ」。
その間をつなぐ7mの吹き抜けのある中央大階段は「紡いでゆく価値」をテーマに構成され、壁面の本棚は、圧倒的な存在感で訪れる方を魅了しています。約1,500冊の書籍の閲覧は宿泊者だけでなくお食事やアフタヌーンティーをご利用になるためにいらっしゃったお客さまがレストランでもご覧いただけるようになっています。
クリスマスシーズンには寄付で集められた本でブックツリーとして飾るイベントがありました。遠方や近隣企業などの寄付で、5,000冊以上の提供があったとのこと。今年のクリスマスシーズンも楽しみです。
海外のお客さまへ日本の伝統工芸品を紹介する「職人ものがたり」という企画も魅力の一つ。職人の方たちの手仕事による精巧な工芸品が、本と一緒に展示されます。こちらは気に入ったものは購入可能です。
写真集から小説までオールジャンルでセレクトされ、「過去・現在・未来」を意識した書籍のあるLibraryホテル。お食事やアフタヌーンティーを楽しみながら新しい発見をしてみてはいかがでしょうか。
取材・文:尹 貴玲
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要です。Adobe Acrobat Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。
お問い合わせ
所属課室:芝地区総合支所協働推進課地区政策担当
電話番号:03-3578-3192