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2022年2月15日(火曜)
大石和奈、坂本涼風(東京工業大学附属科学技術高等学校)
約100社の集合体であるバンダイナムコグループは、世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループとして様々な活動に取り組んでいます。なかでも「IP」と呼ばれるアニメシリーズやキャラクター、ゲームコンテンツなどの知的財産(IntellectualProperty)の特性を生かした“IP軸戦略”でも、社会的課題の解決を目指しています。
バンダイナムコグループが行うサステナブルな社会の実現に向けた活動の大きな特徴は、ファンと一体となって取り組んでいる点です。そのひとつに、小学校を対象としたプラモデル授業「ガンプラアカデミア」があります。2021年10月から延べ10万人が受講したこの授業では、プラモデルの組立てや映像視聴などの学習を通して、ものづくりの楽しさやバンダイナムコグループのサステナビリティへの取組を学びます。
グループ全体では、社屋や自社工場、直営アミューズメント施設などにおけるエネルギー由来の二酸化炭素の排出量を、2050年までに実質0にすることを目標にサステナブル活動を進めています。この実現に向け、5つのマテリアリティ(重要項目)として、「地球環境との共生」「適正な商品・サービスの提供」「知的財産の適切な活用と保護」「尊重しあえる職場環境の実現」「コミュニティとの共生」を掲げています。
こういった脱炭素化の目標と5つのマテリアリティに基づいて、直営アミューズメント施設の照明のLED化や照明を一部消灯するイベント、主原料を石灰石とする素材「LIMEX」を採用したプラモデルの開発、ガンダムのプラモデル「ガンプラ」のリサイクル活動「ガンプラリサイクルプロジェクト」などを実施し、環境に配慮した取組を進めています。
小学校とオンラインを通じて行った、ガンプラアカデミアの様子©創通・サンライズ(提供:バンダイナムコグループ)
今日、世界の様々な場所でリサイクルが行われています。そのなかでもプラスチックのリサイクル率は低く、2015年時点の世界では約9%と言われています(※1)。
ガンプラリサイクルプロジェクトでは、ガンプラを購入したファンの方々から回収したランナー(プラモデルの部品をつなぐ枠で、組立てる際に部品から切り離されて不要になる部分)と生産過程で発生した廃プラスチックをリサイクルします。廃棄物を焼却した際の熱を工場の電力などに変える「サーマルリサイクル」、リサイクル素材を利用したプラモデル「エコプラ」に変える「マテリアルリサイクル」、化学処理を経て新しい樹脂として生まれ変わらせる「ケミカルリサイクル」の3つのリサイクル方式を利用し、循環型社会に貢献することを目標としています。
サーマルリサイクルとマテリアルリサイクルはすでに実用化されています。ケミカルリサイクルはまだ実証段階ですが、2024年を目安に実用化を目指しているそうです。研究が進みケミカルリサイクルが活用できるようになったときには、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを主なリサイクル方法とし、どうしてもリサイクルに使えない樹脂のみをサーマルリサイクルに回すそうです。
材料となるランナーは、全国の直営アミューズメント施設を中心に設置した回収BOXで確保します。みなさんから集めたガンプラのランナーから新しいガンプラが生まれていると考えると、ワクワクしませんか?
ガンプラリサイクルプロジェクトの取組©創通・サンライズ(提供:バンダイナムコグループ)
環境省の2021年3月30日の発表によると、2019年の一般ごみのリサイクル率は、19.6%でした(※2)。現在の日本でリサイクルがあまり進んでいないのはなぜでしょう?
様々な要因がありますが、そのなかでも回収コストが高いことやリサイクル素材を使用した商品への販売が大きな課題となっているそうです。リサイクルは原料の運搬、洗浄、粉砕など多くの工程を経るためコストが高くなりやすく、リサイクル素材は発色や強度が新品に比べて劣ることがあります。しかし、ガンプラリサイクルにはその回収コストを抑え、再生した製品を広く販売する独自の枠組みがあります。
例えば、アミューズメント施設で回収したランナーの運搬には、商品を輸送し終えたトラックの戻り便を活用しています。ほかにも、リサイクルの原料を自社製品に限定して再生工程を減らすなどの工夫を行なっています。
バンダイナムコグループが推し進めるリサイクル活動は、ファンの賛同や協力が重要です。ガンプラリサイクルでは、手元にあるランナーの回収に協力するのも、リサイクルされた商品を購入するのもファンの人々です。
地球環境や会社全体のサステナビリティを、会社とともに実現していくファンとのつながり方も近年変化しています。つながりを維持していくには、ファンとのコミュニケーションが重要です。例えばエコプラは、発色が少し違ったりする場合があります。以前はそのような商品は“基準に合わない”と販売しませんでしたが、現在はそういった点も伝え、ファンの人たちに受け入れてもらえるかどうか意見を聞いたりしています。また、実際にエコプラを組み立てられる体験会を開き、来場した人たちにアンケートをとり、商品を通じた双方向のコミュニケーションをとっています。ファンとのコミュニケーションを通じて得た新しい企業の視点とともに、持続可能な社会の形成に貢献しているのです。
2021年10月20日より全国30箇所で実施された「ガンダムリサイクル作戦」では、ランナーがリサイクルされエコプラになるまでを示したパネルも展示された©創通・サンライズ(提供:バンダイナムコグループ)
リサイクルに対する熱い考えに感動しました。ケミカルリサイクルが実用化されたらどのようなエコプラが生まれるのだろうと楽しみです。ファンとのつながりを大切にしている点も印象に残っています。
ファンの方々により、リサイクルの考えが広まるには、どのようなコミュニケーションが大切なのだろうかと取材を終えて考えています。
普通にリサイクルするのではなく、ファンの人と共にリサイクルを行っているのがとてもいいアイデアだなと思いました。
何十年も愛されているガンプラがリサイクルという過程を経て、より長く愛されるものになればと思いますし、ガンプラを通してプラスチックリサイクルについて、たくさんの人に伝わればと思います。
(※1)ROLANDGEYER,JENNAR.JAMBECK,KARALAVENDERLAW(19Jul2017).Production,use,andfateofallplasticsevermade.ScienceAdvances,
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.1700782
(※2)環境省(2019年3月30日).一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について
http://www.env.go.jp/press/109290.html
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