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本講義では、「パリ」という都市が数多くの芸術家によって描かれることによって、都市としての価値が再創造され続けてきたことに注目した。その際、洋の東西だけではなく、現在と過去という時間軸を考慮に入れると、その要に「パリの詩人」とも呼ばれるボードレールが位置することがわかる。パリが現在のような姿になったのは、19世紀、ナポレオン三世の命を受けてオスマンが主導したパリ大改造計画以来であり、その過渡期を描いたのがボードレールだからである。
そこで、オスマンのパリ改造がどのようなものであったか、過去のパリがどのようなものであったか、地図、写真、諷刺画などを紹介しながらできる限り詳細に説明をした。オスマンの改造を以下の五点(①大通りの新設、②公園・広場の造成と整備、③建造物の修復と建設、④上下水道の整備・拡張、⑤街灯の増設)に分類し、その目的と特徴、さらには現在の様子を交えて立体的に浮き上がらせた。
次に、中世の面影を残していたパリが姿を変えていく様子を、ボードレールはどのように歌ったか、三つの詩篇「後光の紛失」(散文詩)、「通りすがりの女性へ」(韻文詩)、「白鳥」(韻文詩)を通して考察を加えた。「後光の紛失」では諷刺的かつ皮肉を交えて描かれる詩人の姿、「通りすがりの女性へ」では、儚さの中に見出された永遠の美、「白鳥」では、壊されるパリが起動装置となって、記憶や思い出という不可視のものに至ることができることを説明した。
最終的に、「パリ」という都市が多くの芸術家たちによって、語られ新しい形と価値を与えられるようになる出発点としてボードレールの目指した現代性の美の理念があったことを論じることができた。港区という「都市」も新しい価値を持つためには、こういった理論や方法を参考にすることができるだろう。
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