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更新日:2023年3月30日

新しい社会的リスクと福祉国家の再編

7月9日(土曜)3時限:武川正吾

 

福祉国家の語は、1930年代のイギリスで当時のナチスドイツ台頭を「権力国家」としてとらえ、これへの対抗する国家理念として国際政治学者ツィンメルンによって唱えられたことに由来する。またオックスフォード・イングリッシュ・ディクショナリーによると、「福祉国家」の語の文献上の初出は、1941年のテンプル大主教による『市民と聖職者』である。

福祉国家は1.国家目標として考えられることもあるが、社会科学の分析では2.社会給付(年金、医療、介護)が一定水準に到達した国家として、また3.社会規制(労働基準、各種安全基準など)を行う国家としてとらえられることが多い。

福祉国家は人間の生産活動との関係でいえば、産業化、とりわけ産業革命以後の社会変化と結びついて発展してきた。いわゆる「市場の失敗」への対応策である。また再生産との関連でいえば、家族の機能変化との関連が深い。こちらは近代家族が世帯規模の縮小などによって伝統的家族が担っていた役割を担えなくなったという意味での「家族の失敗」に当たる。

福祉国家は20世紀の半ばまでには成立したが、成立当時とは異なる状況が、その後生じた。そうした動きは多元化、新しい社会的リスク、ジェンダー主流化、グローバル化となどでとらえられる。

多元化については、福祉国家レジームの概念が、国の社会保障だけでなく家族や市場も視野に入れた福祉レジームという概念によってうまく説明できる。

またリチャード・ティトマスという社会政策学者が提案した「福祉の社会的分業」という概念が多元化を理解するうえで重要である。とくに財政福祉の考え方は日本ではあまり理解されていないので注目する必要がある。また当初は福祉の多元的供給に関する議論では公的部門、市場部門、インフォーマル部門による分業が語られることが多かったが、近年では、ボランタリー部門も含めた四つの部門からなる福祉多元主義が主流となってきている。

ボランタリー部門(民間非営利部門)に固有の役割として、福祉サービスのパイオニア的機能、社会政策の圧力集団としての機能、福祉サービスへの参加機能、市民に対する情報提供や助言機能がある。

福祉国家の成立時の事情を反映している『ベヴァリッジ報告』が想定していた古いリスクは窮乏、無知、疾病、不潔、怠惰であったが、当初は十分には想定していなかった新しい「社会的リスク」として、女性の労働力の上昇、高齢化、技術革新や国際競争による労働市場の変化、私的サービスの拡大などから派生するリスクなどが指摘されるようになった。

福祉国家の成立当初は男性稼ぎ主モデルを想定していたが、現在は、社会政策の分析にジェンダー視点を取り入れることが重要となっていること、また、グローバル化のなかで社会政策に関する国際協調の意義が求められるようになっている。

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