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更新日:2023年2月2日

医療覚醒―医療のミッションは個々の患者へのブランドの提供!―

10月1日(土曜)4時限:南渕明宏(昭和大学横浜市北部病院循環器センター)

医療者としての提言

長年医療者として、しかし極端にリスクの高い心臓外科医療に携わってきた経験上、医療消費者としての社会一般の皆様にお伝えしたいこととして講演いたします。

医療機関に訪れる患者様はみな大きな不安を抱えておられます。不安が患者をして病院に足を向けさせる動機です。不安なくして患者は病因などと言った意地悪な医者や偉そうにする看護師のいる「病院」にくるはずはありません。そのことを心底から理解している医者は少ないと思います。そしてさらに医療者側が理解していない重要なことは病院という空間を支配する権力勾配です。患者は一番弱い立場です。自分の意見は通らないし、好きに飲酒もできない、という意味ではなく、力、すなわち「権力」の最下層にある、という事実です。これは道理でもあります。つまりそうでなくてはならない、でなければ治療などできない、ということなのですが、医療者側、とくに医者でそのことをわかっている人はほとんどいません。ですから医者がちらりと発して言葉で患者がいかにキズつくか、ぜんぜん理解していないのです。これはもう、改善しようがありません。「そういうものだ」と受け入れるしかないのだと思います。どうしてこうなったのでしょうか?診療行為は医者が主導する、ということから当たり前のように思われますが、私はそれは違うと思います。日本人には外見さえ整っていれば、いかに形ばかりの「権威」でも無批判に認めてしまう習性があります。私の考えでは、これは律令国家以来の、中国伝来の「華夷秩序」の名残です。文明と野蛮の二項対立で社会の権力を正当化する社会秩序が正統化されているのです。『華夷秩序』では、礼儀、作法、分別、教養、長幼の序が美徳とされ重宝されます。これでもって「お医者様」には逆らえない、面と向かって質問をするのは失礼だ、何でもハイハイ聴く、ということが礼儀だと信じられているように思います。全く正反対の、とんでもない患者もたまにはいますが、多くの患者は言いたいことの1%も言えない、押し黙った姿勢で医者に相対しているように思います。私は医者を「多生の縁で今生で宿世を持って出会った友人」として相対するべきだと思います。私にとって患者はすべからく「友人」だと思って接しています。

もう一つの話題は医療の「民主化」です。医療が民主化されるとは、平等で、機会均等、分け隔てなく、標準的な医療がどこでもいつでもうけられること、と受け取れます。IBMのワトソン君は病気や最適な治療法を診断してくれるそうですが、民主的医療の実現はそう遠くはないのかも知れません。しかしそうなると二つの問題が生じます。一つは「誰がそのお金を払うの?」iPS細胞を培養して自分の臓器を再生する、なんていう夢が語られていますが、「そんな金、誰が出すねん?」といつも思います。もう一つの問題は医療が民主化されると「名医」がいなくなります。私はむかし、「そんな宮大工さんのような特殊な手術は保険診療の対象外です」と言われたことがあります。誰にもできない、名医にしかできない高度な技術の手術、は存在してはならないのです。皆が平等にいつでもどこでも受けられないからです。医療が民主化されると「標準的な費用で標準的な水準の医療」しか受けられなくなる、ということになり、重症患者が切り捨てられる社会に向かう気がします。

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