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母子生活支援施設ベタニヤホームの施設長である伊丹桂氏をお迎えし、「親を支えて子どもを護る施設-母子生活支援施設の新たな取り組み-」と題して、ご講義いただきました。母子生活支援施設は社会的養護を担う児童福祉施設のひとつであり、社会的養護の理念は「子どもの最善の利益のために」・「社会全体で子どもを育む」ことにあります。そして、ベタニヤホームは、関東大震災による罹災母子の救援活動を創立の基礎としている、歴史ある施設です。
今回の講義では、現在の母子生活支援施設の課題として、1.利用する親子が少ないこと、それに伴い暫定定員となる施設が多いこと。2.DVシェルターの側面をもつため、あまり周知されないこと、3.親子(家庭)を支えるための専門資格がないこと、を挙げ説明していただきました。次に、母子生活支援施設に求められる機能として、産前産後支援・出産する女性への支援が挙げられました。その背景には、近年の子どもの虐待による死亡事例のなかで、加害者が母親であり、0歳児が犠牲になった割合が高いということが示されました。また、施設退所後も含む、地域の子育て家庭(母子家庭)への支援が挙げられました。社会保障制度が揺らいでおり、仕事を失うと途端に転げる急坂化した社会であること、妊婦への支援は公的扶助のみでは成り立たないこと、強制された自立概念が定着していること、といった構造的な問題とのかかわりのなかで、支援課題をとらえていただきました。最後に、地域に根ざした「家庭支援」として、食支援「パントリー」と子ども食堂への食材提供のしくみ、居場所としての施設開放とボタンティアの積極的受け入れ、地域で必要な支援の展開としての「里親」などが挙げられました。施設に求められる機能は地域と共に、そして、必要なアクションを地域で暮らす人たちと共に起こす、というメッセージが受講生のみなさまに届けられました。今回の講義は、母子家庭のおかれている現状、その背景にある日本社会の状況に目を向けながら、母子の生活とその支援のあり方を考える機会になったと思います。施設訪問がかなわなかったのは残念ですが、コロナ禍でのベタニヤホームの取組みについてもうかがうことができました。お忙しいなか、丁寧にご説明いただき、感謝申し上げます。
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