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更新日:2018年11月30日

写真今昔物語 第30話

伝統技術の保持・継承

写真は、昭和61(1986)年頃の四世石田不識(よんせいいしだふしき)さん。石田さんは、虎ノ門の工房で27歳の頃から半世紀近くにわたり琵琶(びわ)の製作修理に従事されてきました。日本でただ一人の琵琶製作修理の選定保存技術保持者(人間国宝)として、現在も質の高い琵琶を演奏家に供給し続けています。港区は、平成28年12月、石田さんのこれまでの功績をたたえ、港区名誉区民として顕彰しました。

石田さんの出身は青森県。上京後に新宿で宮大工をしていた時、三世石田不識さんに腕を見込まれ縁談をいただいたそうです。「見合いの席で『ビワの家です』と聞いて枇杷(びわ)のことかと思い、『へえ、虎ノ門にそんな広い畑があるんですか』と答えてしまいましたよ」と笑います。「大工だったから木の細工は得意でしたが、楽器には詳しくなかったので猛勉強しました。いい音を出すためには材料の見極めが大切なのですが、良い素材の確保が年々難しくなるのは困りものです」と、良質な琵琶を作り続けることの難しさを語ります。「最近は、30代の頃に作った楽器が、修理で里帰りすることが増えてきました。楽器がどのように扱われていたのかは一目瞭然ですから、長年大事に弾き込まれた跡が見て取れるとうれしいですね。また、昔の自分の腕が未熟だった部分があっても、今の技量で改善できるのは感慨深いものです」と話す石田さんからは、琵琶に対する真摯(しんし)な思いが伝わってきます。

石田さんの技術は、ご子息の石田克佳(五世石田不識)さんが継承しています。克佳さんは、現在は埼玉県に工房を構え、琵琶の製作修理に従事すると同時に薩摩琵琶の演奏家でもあります。克佳さんの演奏は、平成28年12月4日の港区政70周年記念式典でも披露され、美しい音色と歌声は1500人以上の来場者から大変好評でした。「製作者と演奏家の両方の気持ちが分かる。それが息子の強みですね」と石田さん。伝統の技術は次の世代へ脈々と受け継がれています。

昭和61(1986)年
虎ノ門の工房にて

平成28(2016)年
港区政70周年記念式典
(左から、武井雅昭港区長、四世 石田不識さん、石田克佳さん)

※写真の無断転載を禁じます。

お話しくださった人

名誉区民 四世 石田 不識さん
(琵琶製作修理技術者)

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